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リスボン条約
〜 リスボン条約 〜


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アイルランド、第2回目の国民投票で批准を決定

アイルランド国旗 2009年10月2日(金)、アイルランドではリスボン条約批准の是非を問う国民投票が実施された。平日であるこの日は午後10時まで投票が行われ、開票作業は翌朝9時より開始されたが、早い段階から賛成派の優勢が報じられた。最終的に批准支持票は67.1%に達し、反対票(32.9%)に2倍以上の差をつけた。また、全43の内、41の投票区で批准が可決され、残る2つの区(いずれもアイルランド最北部の隣接する地区)でも支持率は決して低くなかった。投票率は58%であった(参照)。

 2008年6月の投票結果 に比べ、批准賛成派が大幅に伸びた背景には、同年秋以降の世界経済・金融危機の影響がある。つまり、EU体制からの孤立は深刻な国内経済をさらに悪化させかねないという「不安」が多くの国民に変化をもたらした(詳しくは こちら)。また、第1回投票時には、ネガティブ・キャンペーンを巧みに展開した批准反対派も、世界経済・金融危機の発生以降は求心力を失い、再び「トレンド」を生み出すには至らなかった。むしろ、資金力でも圧倒的優位を保つ政府や諸政党による国民の啓蒙活動が功を奏し、反対派の主張の誤りが明確に指摘された(詳しくは こちら)。また、これらの批准推進派は、経済回復や雇用創出には欧州統合が必要であることを強調していたが、このように国民の「不安」を掻き立てるスローガンは不当であるとして批准反対派より批判されている。なお、第1回投票時、反対派は、欧州統合は自国の地位を低下させ、また、中立性や妊娠中絶禁止の放棄を余儀なくされると、別の観点から国民の「不安」を煽っていた。第1回国民投票の結果を受け、EU加盟国はそのようなことが起こらないことを明文で定め(詳しくは こちら )、「不安」の解消に貢献している。

 リスボン条約はEUを改革するための条約であるが、今回、アイルランド国民は、EU改革を実現するためにではなく、自国の経済回復のために批准に賛成したと言える。また、批准賛成は、EU改革の支持ではなく、EU加盟継続を支持するという意思表示である。なお、再度、批准見送りが決定されていたとしても、アイルランドはEUから脱退しなければならないわけではない。現行EU法は自主的な脱退について何ら定めていないが、リスボン条約発効後は、明文の規定が設けられるため、脱退の(あくまでも理論的な)可能性は、むしろ、今回の批准支持表明によって高まる。

 投票結果を受け、アイルランドはリスボン条約を批准するものとみられるが、ポーランドとチェコがまだ手続を完了していなため、2009年末までの発効という目標の実現は困難である。リスボン条約が発効しなくとも、EU統合は、現行法(ニース条約体制)に基づき継続されるが、現在、進められている 次期欧州委員会の任命 に大きな影響を及ぼす(詳しくは こちら)。また、常任のEU理事会議長職や外交使節団の設置が見送られるため、EUの対外的関係に影響が生じる。

  投票結果が発表された10月3日は、ドイツの統一記念日である。今年は、第2次世界大戦の敗戦によってフランスの統治下に移され、住民投票の結果、1957年元旦にドイツ復帰を果たした ザールラント州 で記念式典が開催されている。EU統合は、この地に代表される石炭・鉄鋼産業をヨーロッパ諸国で共同管理する必要性に端を発しているが(詳しくは こちら)、2009年10月3日は、欧州統合の新たな発展に道をひらく一日となった。


 リストマーク 国民投票結果の解説は こちら



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アイルランド国旗 アイルランドの国民投票

 ・ Ahern 首相、国民投票の実施日を発表

 ・ 批准反対派の台頭

 ・ 国民投票の結果

 ・ 批准否決の背景

 ・ Eurobarometer の調査結果

 ・ 今後の対応

 ・ EU・加盟国要人の発言

 ・ アイルランドのための特別保障を採択

 ・ 2009年10月2日に国民投票を実施

 New 2009年9月のアンケート調査結果

 New 主要政党の立場



EUの旗 他の加盟国によるリスボン条約の批准



リストマーク 欧州憲法条約




(2009年 10月 3日 記)