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リスボン条約
〜 リスボン条約 〜


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アイルランド国民投票の争点

アイルランド国旗 2009年10月2日(金)、アイルランドではリスボン条約批准の是非を問う国民投票(2回目)が実施される。審判の対象は、あくまでもリスボン条約の批准であるが、主な争点は別のところにある。


主な争点

(1) 欧州統合の重要性 〜 経済問題 vs. 政治問題

 経済成長や雇用創出は、すべての国に共通する重要政策課題であるが、現在のアイルランドにおいて、それらは欧州統合と同意義で議論されている。つまり、経済・金融危機の克服には「EUの傘」に入り続けることが不可欠とされ、特に、アイルランド政府(批准賛成派)は、EU統合の経済的重要性を強調している。これに対し、批准反対派は、自国の地位低下やEUの非民主性・非透明性等、政治的な問題を指摘しているが、国民投票では、これらの経済・政治問題を包括した、欧州統合全体に対する国民の評価が問われる。なお、リスボン条約の批准が再度否決されるとしても、アイルランドはEUから脱退しなければならないわけではない。


(2) ネガティブ・キャンペーン vs. 「EUの保障」

 2008年6月の国民投票時には、批准反対派のネガティブ・キャンペーンが大きな成果を収めたが、それから約1年4ヶ月が経過した現在、アイルランド国民は冷静に評価しうるか、また、もはや新鮮さに欠ける扇動活動が従来のようなインパクトを持ち続けているか注目される。なお、批准反対派の誤ったスローガンを否定し、国民の不安を和らげるため、EU加盟国政府は、2008年12月ないし翌年6月、@EU統合はアイルランドの中立性や社会・租税政策に関する権限に影響を及ぼさないことを確認し、また、A欧州委員会には各国より1名ずつ、メンバーが配属され続けることを決定した(詳しくは こちら)。また、リスボン条約が発効すれば、アイルランドは妊娠中絶を容認せざるをえなくなるという批准反対派(カトリック教の原理主義派)の主張が正しくないことも確認された。国民投票を10日前に控えた9月21日、カトリック教会は、リスボン条約は堕胎に影響を及ぼさないため、信者は自由に判断すべきとする声明を発表している(参照)。第1回目の投票時に比べ、情報提供は客観的になっているが、ネガティブ・キャンペーンに扇動されず、正しい評価を下しうるかどうかも投票結果に大きな影響を及ぼす。


(3) Cowen 政権に対する評価

 経済・金融危機、批准反対派の訴求力の低下、EUによるアイルランドの中立性・主権の保障など、多くの外的環境は、リスボン条約の批准に有利に作用しているが、主な反対材料としては政府の支持率が著しく低下していることが挙げられる。地元紙 Irish Times の調査によれば、政府支持率は12%、また、Cowen 首相の支持率は15%に過ぎない(参照) 。近時は、経済・金融危機の元凶となった金融機関に対する支援が厚すぎると批判されている(参照)。






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アイルランド国旗 アイルランドの国民投票

 ・ Ahern 首相、国民投票の実施日を発表

 ・ 批准反対派の台頭

 ・ 国民投票の結果

 ・ 批准否決の背景

 ・ Eurobarometer の調査結果

 ・ 今後の対応

 ・ EU・加盟国要人の発言

 ・ アイルランドのための特別保障を採択

 ・ 2009年10月2日に国民投票を実施

New  第2回目の国民投票まで1ヶ月

New 2009年9月のアンケート調査結果


EUの旗 他の加盟国によるリスボン条約の批准



リストマーク 欧州憲法条約




(2009年 9月 25日 記)