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リスボン条約
〜 リスボン条約 〜


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第2回目の国民投票まで1月、アイルランドの状況

賛成派の優位、反対派の活動再開


アイルランド国旗 2008年6月12日、アイルランド国民はリスボン条約の批准を見送り、EUを新たな危機に直面させたが(詳しくは こちら)、 約1年4ヶ月後にあたる2009年10月2日(金)、第2回目の国民投票が実施される。

 近時のアンケート調査では、批准賛成派が大きくリードしているが、その背景には、2008年秋以降の世界経済・金融危機によってアイランド経済は大きな打撃を受けており、EUに頼らずにはいられないといった事情がある(詳しくは こちら)。確かに、投票を1ヶ月後に控え、新たに発表された調査結果では、反対派も若干、伸びているが(その主な理由は国内政治に対する不満であると解される)、賛成派の大幅なリードは変わらない(参照こちらも参照)。

 このように経済・金融危機が有利に作用する状況下、アイルランド政府は、9月2日、批准賛成キャンペーンを開始した。その ホームページ では、第1回国民投票の結果を受け、新たにEU加盟国が採択した事項 が強調されているが、これらはリスボン条約の内容に直接、関わるものではない。むしろ、EU統合に対するアイルランド国民の不安を和らげることを目的としているが、国民の最大の関心事である経済・金融危機対策については触れられていない。Cowen 首相は、現在の危機的状況を克服しうるのはEUであると国民に訴え、支持者の拡大に成功しているが、その一方で、国内政治に対する国民の不満は根強く、リスボン条約の批准にネガティブに作用する危険性がある。地元紙 Irish Times の調査によれば、政府の支持率は12%に過ぎない(参照) 。

 第1回目の国民投票に際しては、企業家の Ganley 氏が率いる Libertas が(参照)、批准反対運動を強力に展開し、大成果を収めたが、2009年6月5日の欧州議会選挙で議席を獲得できずに敗北したことを受け、Ganley 氏は、第2回目の国民投票には介入しないことを明らかにしていた。ところが、再投票を約3週間後に控えた9月13日、反対運動を再開させ、リスボン条約によるさらなる主権の委譲(例えば、産業政策の分野における国の権限をEUに移すこと)やEUの民主的欠陥を批判している(参照@A)。また、批准反対活動を再開した理由として、欧州委員会が当初の方針を一転させ、自国内でリスボン条約の利点を訴えていることや、アイルランド政府は誤った情報を国民に提供していることを挙げている(参照)。前述した欧州議会選挙の結果を考慮すると、国民を「扇動」するには至らないと解されるが、国内政治に対する国民の不満をうまく集約できれば、今回も勝利を収めることができよう。

 Ganley 氏は、EU加盟国が第1回目の国民投票結果を尊重せず、リスボン条約の「蘇生」を図ったことをも批判しているが(参照)、10月の国民投票で再度、批准反対派が過半数に達せば、3度目の試みは非常に困難となろう。前述した現況下では批准可決が有力であるが、否決される場合、EU統合は現行のニース条約体制に基づき進められることを スウェーデン政府 (現EU議長国)は確認している(参照)。同条約によるか、またはリスボン条約によるかの違いは、例えば、欧州委員会の構成に関し生じる(詳しくは こちら)。2009年10月ないし2009年末の任期切れを控え、現在、新委員会メンバーの指名・任命作業が進行中であるが、委員長を除く、その他のメンバーの選出は、アイランドの国民投票実施後に行われる予定である(参照)。



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アイルランド国旗 アイルランドの国民投票

 ・ Ahern 首相、国民投票の実施日を発表

 ・ 批准反対派の台頭

 ・ 国民投票の結果

 ・ 批准否決の背景

 ・ Eurobarometer の調査結果

 ・ 今後の対応

 ・ EU・加盟国要人の発言

 ・ アイルランドのための特別保障を採択

 ・ 2009年10月2日に国民投票を実施

 New 2009年9月のアンケート調査結果

 New 主要政党の立場



EUの旗 他の加盟国によるリスボン条約の批准



リストマーク 欧州憲法条約




(2009年 9月 13日 記 9月14日 更新)