2009年10月2日(金)、アイルランドではリスボン条約批准の是非を問う国民投票(2回目)が実施される。従来のEU関連投票ないし欧州議会選挙を考慮すると、投票結果には、リスボン条約そのものの評価よりも、国内政治・経済に対する国民の見解が強く反映されると考えられるが、世界経済・金融危機の影響を強く受け、大不況に見舞われている状況下、政府の経済政策に対する国民の不満は根強い。地元紙
Irish Times の調査によれば、政府支持率は12%、また、Cowen 首相の支持率は15%に過ぎない(参照) 。
政党別でも、首相の属する共和党(Fianna Fáil)の支持率は24%と、野党 Fine Gael の支持率(33%)を下回っており(参照)、これが国民投票にネガティブに作用する危険性も払拭されない。もっとも、両党共に批准に賛成している他、それらに次いで支持されている労働党(19%)や緑の党(5%)など、主要政党は批准支持を訴えているため、Cowen
政権に対する不満の影響は限定的と解される。なお、最大野党 Fine Gael の支持者の内、批准に賛成する者は58%、反対者は23%、また、第2野党である労働党支持者の43%も批准に賛成している(反対は31%)(参照)。
国会に議席を有する政党で、批准に反対しているのは、シン・フェイン党のみであるが、支持者の66%も批准に反対している(賛成者は13%)(参照)。
2008年6月の第1回投票時も、シン・フェイン党を除くすべての主要政党は批准に賛成していたことを考慮すると、政党の影響は大きくないとも言えるが、前回は、諸政党の活動よりも、批准反対キャンペーンによって国民を扇動した団体の方が巧みであったとみるべきである(参照)。また、国内経済は第1回目の投票時よりもさらに落ち込み、EUの助けなしに回復できないレベルにまで悪化した現状は、国民の選択の幅を狭めている。今回も批准が否決されるようなことがあれば、Cowen
政権は崩壊し、国内経済はますます悪化することになろう。仮に、リスボン条約発効の見通しが立たなくなるにしても、現行法であるニース条約に基づき、EU統合は継続されるため、EUに対するよりも、アイルランドに対する影響の方が大きいと考えられる。
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