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欧州委員会の選任


欧州議会、Barroso 欧州委員長の再任を承認

 2009年9月16日(水)、欧州議会は Barroso 欧州委員長 の再任を多数決により決定した。総議員736人のうち、再任に賛成した議員は382人、反対者は219人、棄権者は117人であった(参照)。対立候補はいなかったため、投票は現職に対する信任決議の意義を持ち合わせていたが、Barroso 氏は、自らが属する保守系政党(欧州議会の最大会派である「ヨーロッパ国民会派」)に所属する全議員(265人)や自由会派議員の大多数(84人)によって支持された。他方、社会党会派や緑の党会派は、再任に批判的な立場をとる一方で、各議員に判断を委ねていたが、一部の議員は賛成票を投じた(なお、多くの社会党会派議員は棄権している)。その他にも、反EU統合陣営(特に、Tories )の支持を受けた(参照)。社会党会派を率いる Schulz 議員(ドイツ)は、アンチ・ヨーロッパ議員の支持をとりつけなければ成立しえない Barroso 委員会の脆弱性を批判しているが、Barroso 氏は、委員長としての自らの政党は「ヨーロッパ」であり、超党派であることを強調している。実際に、欧州議会は複数の候補者の中から1名を選ぶのではなく、単独の候補者の信任を決定するため、委員長候補は、自らの政治母体を越えて広く支持される必要がある。その反面、委員長は(ますます権限を強化しつつある)議会への譲歩を余儀なくされる。過去5年間の Barroso 委員長の活動は妥協の連続であり、危機的状況下で求められる強力なイニシアチブに欠けると批判されることが多いが、現在のEU・EC機構制度上、委員会は、欧州議会だけではなく、加盟国に対しても、方針を貫徹する力を持っていない。また、加盟国数の大幅増によって利害関係の対立も増しているため、その調整役に追われることが多くなっている。「カメレオン」と揶揄されることもある Barroso 委員長の八方美人的柔軟性は、再選を果たすための戦略であったとも考えられるが(参照)、3期目を視野に入れないならば、経験に基づき強化される権威を武器に、第1期目より強いイニシアチブを発揮することができよう。


◎ 欧州委員長の選任手続

 EC条約第214条第2項によれば、委員長は、EU加盟国政府の相互承認(つまり、加盟国政府の全会一致の決定)によって指名された後、欧州議会の同意を得なければならない(詳しくは こちら)。なお、加盟国政府は、欧州議会の議員の中から候補者を指名する必要はなく、Barroso 氏は直前までポルトガルの首相を務めていた。

 現在、批准作業が進められているリスボン条約によれば、直前の欧州議会選挙の結果が考慮されなければならない。現行法上、このような要件は設けられていないが、Barroso 氏の指名もこれに合致しており、2009年6月の選挙で最大会派のポジションを維持した保守系政党に属している。職務の継続は Barroso 委員長自らが希望し、また、特に、独仏首脳(共に保守系政治家)によって支持されたため、保守系の有力な対抗馬が立てられることはなかった。

     
(2009年 9月 16日 記)



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