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リスボン条約
〜 リスボン条約 〜


リストマーク 概要 リストマーク

 リストマーク 目 的 と E C の 廃 止 ( E U へ の 一 本 化 )

 締結地にちな み「リスボン条約」と呼ばれる新条約は(第7条参照)、「改革条約」とも呼ばれる。この名称が示すように、同条約は、1993年11月に15ヶ国体制で構築されたEU機構制度を見直し、また、諸制度を今日の要請に合致させることを目的としているが(参照)、法的には、EU条約とEC条約を改正するための条約として捉えることができる。

 EU改革作業の開始は、2001年12月の欧州理事会(Laeken における会合)で決定され、欧州憲法条約の締結(2004年10月)という形で成果をあげたが(参照)、フランスとオランダ で実施された国民投票において、同条約の批准が否決された(参照) 。憲法条約の発効には全加盟国の批准が必要であることから、加盟国は同条約の発効を断念し、新たにリスボン条約を締結した(参照) 。リスボン条約も発効が危ぶまれたが(参照)、2009年12月、発効するに至った。これによって、欧州憲法条約の起草にまで遡る一連の改革手続は終了した。

 EU改革という目的を達成するため、リスボン条約は、EU条約やEC条約を大幅に改正しているが、従来のEUおよびECがEUに一本化される点も注目に値する。つまり、1958年元旦に設立され、1993年11月にECと改名された欧州経済共同体は、リスボン条約の発効後、EUと呼ばれることになる(第2条第2項第a号参照)。これに伴い、EUには 法人格 が与えられる(第47条、第24宣言参照)。また、従来のEC条約は、「EUの機能に関する条約」(‘Treaty on the Functioning of the European Union’)と改められる(リスボン条約第2条第1項)。なお、欧州原子力共同体(およびその設立条約)は、部分的に改められるが、存続する(リスボン条約附属第2議定書参照)。
 


従 来 リスボン条約発効後
  EC   EU

 EC条約

(Treaty establishing the European Community)

EUの機能に関する条約

(Treaty on the Functioning of
 the European Union)

 
 リストマーク 同条約については こちら



 なお、新EU条約第1条第3項は以下のように定め、両条約は同等の価値を有する(つまり、優越関係はない)ことを明らかにしている。

The Union shall be founded on the present Treaty and on the Treaty on the Functioning of the European Union (hereinafter referred to as “the Treaties”). Those two Treaties shall have the same legal value. The Union shall replace and succeed the European Community.




 リストマーク 構 造

 前述したとおり、リスボン条約は全第7条からなるが、第1条と第2条は、それぞれ、EU条約とEC条約の改正について定めており、多数の規定が盛り込まれている。

 リスボン条約の構造
   第1条 EU条約の改正
   第2条 EC条約の改正
   第3条 条約の期限(無期限)
   第4条 議定書
   第5条 EU条約およびEC条約の条文数等
   第6条 効力発生
   第7条 成文、寄託等



 リストマーク 機 構 制 度 改 革

   こちらを参照

   

     リストマーク EU基本権憲章については こちら

     リストマーク 欧州憲法条約による機構制度改革については こちら




 リストマーク E U の 権 限 ・ 政 策

 従来の3本柱構造 は、もはや維持されず、第3の柱 は第1の柱に組み込まれる(政策のEC化)。これらは共に、「EUの機能に関する条約」の中で規定されるが、第2の柱 については、従来どおり、EU条約で定められる(新EU条約第5編)。なお、共通外交・安全保障政策は、外交政策に関する加盟国の既存の権限や政策に影響を与えない旨が明記された(第13・第14宣言参照)。


 従来どおり、EUは、加盟国から与えられた権限のみを行使しうる(個別的授権の原則、第24宣言参照)。

 EUの権限や加盟国との権限配分に関し、欧州憲法条約は初めて詳細な規定を設けていたが(第I-13条以下)、リスボン条約に継承されている(新EU条約第3条〜第6条)。その詳細は以下の通りである。

(1) EUの排他的権限

 以下の政策分野では、加盟国よりEUに権限が完全に委譲されており、EUが排他的に権限を持つ(第3条第1項)。
 

関税同盟  

域内市場 の機能に必要な競争規定の制定

ユーロ導入国の通貨政策 

共通漁業政策の一環としての海洋生態系の維持

共通通商政策


 その他、EU内の政策の実施に必要であったり、または、EU法に支障を及ぼすとき、EUは国際条約を締結しうるが、この条約締結権限はEUにのみ与えられる第3条第2項)。  


 (2)EUと加盟国の双方が有する権限

 例えば、以下の政策分野において、EUは加盟国と権限を共有する(第4条第2項)。EUと加盟国が共に権限を持つこの形態が原則的である。

域内市場

社会政策 (欧州憲法条約第3部で定められた事項について)  

経済、社会および地域的結束 (地域政策)   

農業漁業政策(なお、海洋生態系の維持 は除く)   

環境

消費者保護

交通政策

汎欧州ネットワーク

エネルギー

自由、安全、正義の空間

健康に関する共通保障問題


 研究、技術開発や宇宙航空の分野において、EUは、特に、プログラムを策定し、実施することができる。もっとも、加盟国の権限行使を阻害してはならない(第4条第3項)。


 また、発展援助 や人道支援に関し、EUは何らかの措置を講じたり、共通の政策を実施することができる。もっとも、加盟国の権限行使を阻害してはならない(第4条第4項)。


 さらに、以下の分野において、EUは加盟国の政策を支援、調整、または補充することができる(第6条)。

人の健康保護

産業

文化

観光

教育、職業訓練、青少年、スポーツ

市民の保護

行政協力



  (参照) かつての権限配分は こちら


 なお、新EU条約第4条第2項 は、EUは加盟国を平等に扱い、また、加盟国の独自性や政治・憲法上の制度を尊重しなければならない。また、第3項は、EUと加盟国は互いに協力し、憲法が定める目標・課題の達成に努めなければならないと定める(EUと加盟国の相互協力義務)。なお、これらの規定は、欧州憲法条約第I-5条を踏襲している。




 リストマーク 発 効

 リスボン条約が発効するには、全加盟国が国内憲法の規定に従い批准する必要がある(第6条第1項、EU条約旧第48条第3項)。2008年末までに全加盟国の批准が終了し、批准書がイタリア政府に寄託されていれば、2009年元旦に発効するが、そうでない場合には、最後に批准した加盟国が批准書を寄託した翌月の最初の日に発効する(同第2項)。



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