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共通漁業政策


star 4. EC第2次法

 ECに与えられた排他的権限を行使し、EU理事会は一連の法令を制定しているが、それらは@魚種の保護に関する規則(Council Regulation (EC) No. 2371/2002, OJ 2002, No. L 358, 59)とA共通市場規則(Council Regulation (EC) No. 104/2000, OJ 2000, No. L 17, 22)を柱としている。

   ・ 立法手続について


4.1. 魚資源の保護

 (1) 総許容漁獲量(Total Allowance Catches - TAC)の決定

 前述したように、魚種や海洋資源の保存・保護に関し、ECには排他的権限が与えられているが、当初、理事会は所定の期限までに必要な法令を制定しなかったため、EC裁判所は、EC(当時のEEC)の権限の排他性にもかかわらず、欧州委員会と協力しながら、共通の利益のために行動することを加盟国に認めた(Case 804/79, Commission v. UK [1981] ECR 1981, 1045, paras. 28-32)。なお、理事会によって規則(Regulation 170/83, OJ 19883, No. L 24, 1)が制定されたのは1983年のことである。

 現在は、Regulation (EC) No. 2371/2002 に基づき、理事会が各魚種の総許容漁獲量(Total Allowance Catches (TAC))を特定多数決にて決定している(同規則第20条)。理事会の判断は、欧州委員会の提案に基づき、毎年12月末に下されるが、同委員会は加盟国の専門家で構成される部会(Scientific, Technical and Economic Committee for Fisheries (STECF))やその他の組織と協議し、原案を作成している。



New 漁獲量を安定させ、また、中長期的観点から漁資源を保護するため、単年度ベースの総許容漁獲量だけではなく、長期的計画も決定されているが、同計画は短期的な政治的圧力に屈し、貫徹されていない。また、例年、総許容漁獲量は非常に高く設定されており、EC内の乱獲状況は、その他の地域に比べても非常に高くなっている(参照 @A)。



 ECの総許容漁獲量(TAX)に基づき、各加盟国に漁獲量が割り当てられ、さらに加盟国から自国船籍に漁獲量が割り当てられている(第20条第3項参照〔補完性の原則〕、漁獲量割当の許容性について、Case 46/86, Romkes [1987] ECR 2671, para. 17)。なお、一定の要件の下、加盟国は割当量を次年度に繰り越したり、または、次年度の割当量を利用することができる(Council Regulation (EC) No. 847/96, OJ 1996, No. L 115, 3)。また、他の加盟国と交換することも許される(Regulation No. 2371/2007 第20条第5項)。

 自国船籍への割当てに際し、加盟国は従来の操業やその可能性を客観的に評価しなければならず、不当な差別は禁止されている(Case 207/84, de Boer [1985] ECR 3203)。漁獲割当量を得る目的で他の加盟国に漁船を登録した者に対し、同加盟国は割当を拒むことができるかという問題について(quota-hopping)、EC裁判所は、EC法上の大原則である開業の自由に鑑み、他の加盟国での漁船登録は認められなければならないが、漁獲量の割当てに際し、加盟国は自国と漁船との間に真の経済的関連性があることを求めうるとしている。このような関連姓は、定期的に(恒常的である必要はない)加盟国の港湾をベースとし操業される場合に認められる。なお、加盟国は、漁獲量の一部を自国に陸揚げすることを要件としてはならない(Case C-216/87, Jaderow [1989] ECR 4509, para. 36)。

 割当量の遵守に関する調査や規制は、加盟国(旗国)によって行われる(規則 2371/2002 第11条〔補完性の原則〕)。割当量違反が存する場合、加盟国(旗国)は刑事・行政手続を開始しなければならず(Case C-52/95 Commission v. France [1995] ECR I-4443, paras. 34 et seq.; Joined Cases C-418/00 and C-419/00 Commission v. France [2002] ECR I-3969, paras. 62 et seq.)、これを放置したり、適時に適切な措置を講じない場合、加盟国(旗国)はEC法に違反することになり、割当量の交換が可能であるという事実のみをもって、この違反は正当化されない(Case C-62/89 Commission v. France [1990] ECR I-925)。

 なお、加盟国による監視を調整・支援し、魚種の長期的保存を確保するため、2005年には、Community Fisheries Control Agency が設置された。現在の設置場所はブリュッセルであるが、2008年内にヨーロッパ最大の漁港都市ビゴ(Vigo)(スペイン)に移される予定である。


   (参照) TACについて
 


(2) 回復計画(recovery plans)と管理計画(managements plans)の策定

 生存が脅かされている魚種に関し、EU理事会は回復計画を策定し、その回復に必要な措置を決定しなければならない(第5条)。他方、その他の魚種に関し、理事会は管理計画を設けることができる(第6条)。上述した年間総許容漁獲量(TAC)の決定に際しては、これらの計画が参照される。
 


(3) 操業規制、技術的規制と構造改革

 上述した措置は、いずれも漁獲量を制限するものであるが、古くからECは、漁船の数、大きさ、稼働力、また、操業時間を規制している(第11条以下)。漁獲量の制限に貢献する、これらの措置は、主に加盟国によって決定されるが、廃船や操業規制といった構造改革の影響を和らげるため、ヨーロッパ漁業基金(European Fisheries Fund 〔EFF〕)が設けられている。同基金の予算は、EUの財政計画と同様に、7年単位で組まれているが、2007年〜2013年の期間には、38億5000ユーロが計上されている。なお、それ以前(2000年〜2006年)は別の財政支援制度(Financial Instrument for Fisheries Guidance 〔FIFG〕)が存在したが、2007年より上掲の基金に変更されている。

   (参照) Fleet management


 さらに、以下の点に関し、技術的要件も設けられている。

   ・稚魚や小魚を保護するための魚網の規格
   ・流し網の規制
 

(4) 監視

 上掲の量的・技術的規制の監視は、主として加盟国によって行われ、加盟国は自国の領海および港湾にある漁船の監視が義務付けられている。なお、これは漁船の船籍を問わない(Case C-9/89 Spain v. Council [1990] ECR I-1383, para. 10)。つまり、加盟国は、自国港での積み下ろしや自国の領海における積み替えを監視し、毎月、欧州委員会に報告しなければならない(第23条)。同委員会は加盟国の監視をコントロールするとともに(「監視の監視」)また、欧州委員会も船舶への立入調査や陸上での調査を行うことができ、必要な情報へのアクセスが保障されなければならない(第27条)。なお、漁船は、さらに旗国の管理下に置かれる。
 

   (参照) 監視について


 


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