1.2. 職権主義
当事者主義に対し、裁判所に権限と責任を認める原則を 職権主義 と呼ぶ。
具体的には、以下の点について、裁判所の主導権が認められる。
@ 手続の進行に関する裁判所の権限(職権進行主義)
手続の進行は、他の手続利用者の利害にも関わるため、当事者の自由には任せず、裁判所が指揮する(詳しくは こちら)。
A 訴訟上の案件(訴訟法上の問題)等に関する裁判所の権限(職権調査主義)
訴訟上の案件(訴訟法上の問題)や、適用される実体法の選択・内容について(参照)、裁判所は当事者の申立てをまたずに、自ら進んで調査し、判断する(しなければならない)。これを職権調査主義と呼ぶが、当事者の申立てがなくても調査される点で、前述した
処分権主義 に対比される。職権調査の対象となる事項を職権調査事項と言うが、その例は以下の通りである。
a) 訴訟要件
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b) 訴訟能力 の有無(こちらも 参照) |
c) その他の訴訟法上の強行規定の遵守
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d) 適用すべき実体法の決定やその内容の調査(参照) |
当事者は合意や責問権の放棄によって、これらの調査を省略させることはできない。なお、これらの調査に関する異議の申立ては、時間的に制限されない。
B 訴訟資料の収集に関する裁判所の権限(職権探知主義)
人事訴訟については、真実を発見する必要性が高く、また、判決の効力が第三者にも拡張されるため、判断の基礎となる資料は裁判所によって収集される(職権探知主義〔人事訴訟法第20条、第19条第1項参照〕)。また、通常の訴訟においても、公益性の強い案件(裁判権や 訴訟能力 など)については同様である。訴訟資料を裁判所が収集し、裁判所は当事者が提出しなかったものまで、裁判の基礎にすることができるという点で、前述した
弁論主義 に対比する。
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