当事者適格は 訴訟要件 の一つであり、その有無は、裁判所によって職権で調査される。原告ないし被告が当事者適格を欠く場合、訴えは却下される。
5. 訴訟能力(民法上の行為能力)
訴訟能力とは当事者として自ら単独で有効に訴訟を追行し、または相手方や裁判所の訴訟行為を有効に受けることができる能力を指す。訴訟手続は複雑であるため、専門知識が必要とされるが、自らの権利・利益を適切に防御することができない者を保護するために設けられた制度である。
この制度は私法上の 行為能力 と同じ趣旨に基づいており、原則として、それに準じた取り扱いがなされる(第28条)。つまり、私法上の行為能力を有する者は訴訟能力をも有する。
◎ 民法上、行為能力が制限されている者
・ 未成年者(第4条以下)
・ 被後見人、被保佐人、被補助人(第7条以下)
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他方、行為能力に欠ける未成年者や成年被後見人は、原則として訴訟能力を有さず、法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができない(第31条本文)。
法定代理人については こちら
なお、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合には、その範囲で訴訟能力が認められる(同条但書)。法定代理人がいないか、法定代理人が代理権を行使しえない場合において、相手方が訴訟行為をする必要があるときは、特別代理人 の選任を求めることができる(第35条第1項)。
訴訟能力は個々の訴訟行為の有効要件であるため、訴訟無能力者の訴訟行為や同人に対する訴訟行為は無効である。もっとも、追認があれば遡って有効になる(第34条第2項)。
当事者が訴訟能力を欠く場合、裁判所は補正を命じなければならない(第34条条第1項)。訴訟能力の欠缺を看過してなされた判決は、上訴または再審の訴えを提起し、その取消しを求めることができる(第312条第2項第4号、第338条第1項第3号、第312条第2項但書参照)。なお、訴訟能力の審査には、職権探知主義 が適用される。
訴訟要件について こちらも 参照
6. 弁論能力
弁論能力とは、裁判上、実際に弁論をするために必要な能力を指す。我が国では弁護士をつけず、当事者本人が訴訟を追行することも認められる。つまり、訴訟能力を有し、単独で訴訟の当事者となりうる者(訴訟能力者)は弁論能力をも有するとの前提に立っているが、具体的なケースにおいて、裁判所は、訴訟手続の迅速かつ円滑な進行を確保するため、事案を十分に解明しえない当事者の陳述を禁止し(第155条第1項)、弁護士の付添を命ずることができる(同第2項)。これによって当事者は弁論能力を失う。
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