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ユスティティア EUの教育・青少年政策




G.   終 局 判 決 に よ る 訴 訟 の 終 了


3. 訴訟要件

3.1. 定義

 訴訟要件とは、裁判所が判決(本案判決)を下すうえで満たされていなければならない要件を指す。つまり、裁判所が原告の請求の当否について判決を下すためには、訴訟要件が充足されていなければならない。訴訟要件に欠けるときは、裁判所は本案判決を下すことができず、訴えを却下する(例外 @A)。なお、訴訟要件とは、訴訟の開始ないし成立に関する要件ではない。つまり、訴訟要件の有無にかかわらず、訴えが提起されれば訴訟手続は開始され、この訴訟手続において、訴訟要件の具備が審査される。


訴えの提起  訴訟手続の開始 訴訟要件の審査

充足
・請求認容判決
・請求棄却判決


充足せず
・訴えの却下

その他の措置
    @A


 個々の訴訟要件について、まとめて規定した条文はないが、主な例は以下の通りである。

 
(1) 訴えに関する要件


訴状が適式であること

 なお、この訴訟要件が満たされない場合、裁判長は補正を命じなければならず、原告によって適切に補正されないとき、裁判長は訴状を却下する(第137条)。

訴状の送達が有効であること(参照

訴えが我が国の裁判権に属すること(参照

重複起訴の禁止に触れないこと(第142条

再訴の禁止(第262条第2項)や失権効(人事訴訟法第25条)に反しないこと

複雑訴訟の場合はその要件が満たされていること(第38条、第47条、第136条、第143条、第145条、第146条など

訴えの利益 が存在すること



  (2) 当事者に関する要件


当事者が実在し、当事者能力 を有すること

 なお、訴訟能力 も一般的な訴訟要件にあたるかについては見解が分かれているが、通説はこれを否定する。つまり、訴訟能力は訴訟が裁判所に係属している間、常に存在していなければならないわけではない。なお、訴訟能力に欠ける者の訴えは適法に係属しえない(この意味において、訴訟係属の時点における訴訟要件とみることができる)。また、係属後、喪失する場合は、当事者は訴訟行為を有効になしえず(この意味において、訴訟能力は個々の訴訟行為の有効要件である)、訴訟代理人によって代理されるまで訴訟が中断する。

当事者適格 が存在すること



 (3) 裁判所に関する要件


被告が我が国の裁判権に属すること

受訴裁判所が管轄権を有すること(参照

 なお、受訴裁判所が訴えの管轄権を有さないときは、訴えを却下するのではなく、管轄裁判所に移送するものとされている(第16条第1項)。
 


 なお、以下の訴えに関する事由は、被告が申し立てなければ審査されない。これを抗弁事項と呼ぶが、通説はこれらも訴訟要件の一つとして扱う。
 

仲裁の合意(裁判によるのではなく、仲裁で紛争を解決する旨の取り決め)が存在すること

不起訴の合意が存在すること

原告が必要な訴訟費用を担保していないこと(第75条)


 

3.2. 訴訟要件の調査

(1) 調査資料の収集

 裁判所は当事者(被告)の申立てを待たず、職権で訴訟要件が満たされているかどうかを調査しなければならない(職権調査主義)。ほとんどの事由は、裁判所が職権で判断の基礎となる資料を収集するが(職権探知主義)、公益性の強くない訴訟要件は、当事者が収集するものとされている(そのため、裁判所は当事者が提出した資料に基づき判断する)。このような事由としては、任意管轄、訴えの利益や 当事者適格(判決に対世効が与えられる場合は除く)が挙げられる。

 

(2) 調査の順序

 前述したように、訴訟要件として多くの事由を挙げることができるが、その調査の順番について民事訴訟法は定めておらず、学説は対立している。まず、訴えの適法性に関する要件について調査し、次に、当事者に関する要件について調査すべきと解される[1]

 

(3) 訴訟要件の調査と本案審理の順序

 訴訟要件の調査と本案審理の順番についても明文の規定がないが、本案の審理に先立ち、訴訟要件の審査が終了していなければならないわけではない。つまり、訴訟要件は本案審理が終結する時点(つまり、口頭弁論終結時)で備わっていればよく、審理を並行して行うことができる。

 

(4) 訴訟要件の欠缺と本案判決

訴訟要件は本案判決を下すための要件であるため、原告の請求に正当な理由がないことが明らかな場合でも、訴訟要件の調査が完了するまで、請求棄却判決(本案判決)を下してはならない。調査の結果、訴訟要件に欠けることが判明すると、裁判所は訴えを却下しなければならないが(原則)、原告の請求を認めない点で違いはなく、審査の継続は訴訟経済に反すると批判されている[2]




 

[1]     中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕編『新民事訴訟法講義』第2版(有斐閣2004年)407頁参照(松本博之)。

[2]      中野他編・前掲書408頁参照(松本博之)。

 

 
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