代 理 |
1. 総説 代理とは、第3者(代理人)が本人に代ってある法律行為をなし、その効果が本人に生じる制度である(民法第99条以下参照)。適用通則法は、代理に関して特別の規定をおいていないため、解釈で補う必要がある。
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2.準拠法の決定 @法律行為の中には、その性質上、代理に親しまない行為があるが(例えば、婚姻、養子縁組、遺言など)、代理の許容性に関する問題は、各法律行為の準拠法による。例えば、婚姻の代理が認められるかどうかは、婚姻の準拠法 による。また、養子縁組の代理の許容性は、養子縁組の準拠法 による。
また、代理行為の暇疵、代理人の能力、顕名主義(民法第99条参照)など、代理行為の成立に関する問題も、代理人が行う法律行為の準拠法による。例えば、ある物権の処分に関する代理行為の暇疵については、物権の準拠法 による。
A代理権の範囲や効力については、法定代理と任意代理とに分けて考える必要がある。 法定代理[1]は、本人の意思に基づくのではなく、法律に基づき直接発生する代理である(例えば、未成年者に対する親権者の代理権など)。そのため、代理権の発生または存否および効力は、その法律(すなわち代理権発生の原因となった法律関係の準拠法)による。例えば、未成年者の親権者(法定代理人)の指定、代理権の範囲に関する問題の準拠法は、適用通則法第32条 に従い決定される[2]。また、後見人の指定やその代理権の範囲に関する問題の準拠法は、第35条 に従い決定される。 法定代理の準拠法について
任意代理は本人の授権行為(例えば、委任〔民法第104条参照〕や雇用など)に基づく。 (a) 本人と代理人との関係に関する問題は、原則として、授権行為の準拠法(具体的には、委任や雇用の準拠法)による。従って、一般的には 第7条以下 を適用して、準拠法を決定する。
(b) 代理人と相手方との関係は代理行為の準拠法による。 例えば、本人(貸主)より委任され、代理人が、相手方(借主)から、賃貸料の請求をする場合には 債権の準拠法(第7条以下)、賃貸物の返還を請求する場合には 物権の準拠法(第13条) による。
(c) 本人と相手方との関係に関する準拠法については見解が対立している。従来の通説は、授権行為(例えば、委任)の準拠法によるとする。もっとも、相手方が授権行為の準拠法を知ることは困難であるとして批判されている。従って、原則的には授権行為の準拠法によるとしつつも、内国取引の保護のため第4条第2項 を類推適用するとする見解が有力である[3]。
(d) 表見代理や無権代理に関し、従来の通説は、これは代理行為の効力の問題であるから、その準拠法による(すなわち、表見代理人のなした法律行為の準拠法による)と解しているが[4]、近時は、取引の安全を重視して、代理行為がなされた場所(代理行為地)の法律によるとする見解が有力である[5]。 |
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