任 意 代 理 (表 見 代 理) の 準 拠 法


 
〔神戸地裁昭和34年9月2日決定、渉外判例百選(第3版)54頁参照

 X社は、釜山に支店を有する海運会社であるが、その所有する船舶が神戸港に停泊している際、Yは、以前、Xに貸した金銭がまだ返還されていないとして、同船舶の競売を申し立て、神戸地裁によって認められた。これに対し、Xは、問題の金銭は、AがX社の代表と偽り借り受けたもので、本件競売は不当であると主張した。他方、Yによれば、XはAに代理権を与えている、または、与えたと信じるに足る理由があると主張した 。これに類似する事件において、神戸地裁(神戸地裁昭和34年9月2日決定、渉外判例百選(第3版)54頁参照)は、以下のように判示した。

 任意代理人、あるいは、任意代理人と称する者(A)の行為により本人(X)と相手方(Y)とがどのような法律関係に立つかという問題の準拠法の決定につき考えるに、まず、法例第7条(適用通則法第7条) の適用または類推適用により、代理権授与の表示行為の成立および効力の準拠法によってこれを決するのが正当と考えられるから、代理授権行為等の準拠法は、XA間の合意により定まるものといわなければならない。しかし、この場合には、第三者たる代理行為の相手方(Y)にとって、有効な代理権の存否について認識することは必ずしも容易ではなく、また、渉外的取引の円滑化の要請が害されるという状況が生じ、これは、国際私法の趣旨に反すると解される。それゆえ、法例第3条第2項(適用通則法第4条第2項) を類推適用し、行為地の法律において、本人(X)が代理人と称する者(A)の行為の責任を負うと規定されている場合には、この法律を適用すべきである。


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