2019年10月23日現在、EUにはヨーロッパの28ヶ国が加盟しています。例えば、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランドといった国々がEUに加盟していますが、これらの国々はEUに多くの立法権限・政策決定権を与えています。そのため、個々の加盟国が独自に法律を制定するのではなく、28ヶ国がまとまり、EUとして法を制定する分野・案件があります。特に、農業や貿易に関する事項は、もはや加盟国単位で決定することはできず、EUレベルで決定されます。また、加盟28ヶ国中、19ヶ国は、自国の通貨を放棄し、「ユーロ」(Euro)と呼ばれる通貨を用いていますが、これらの国々は通貨に関する権限をEUに完全に委譲し、他の加盟国と政策を共通にしていることになります。
これに対し、健康、教育・スポーツ、文化といった政策分野では、現在でも加盟国が強い権限を持っており、EUは加盟国の政策を支援したり、調整しうるに過ぎません。これは、健康、教育・スポーツ、文化などは、EUが目指す経済統合とは密接に関連していないだけではなく、個々の国や地域の伝統や習慣を考慮しながら、政策決定を行うことが望ましいという考えに基づいています。
このように、人々の健康に関する政策について、EUは強力な権限を持っているわけではありませんので、禁煙対策についても、EUが強力に推進しうるわけではありません。もっとも、人の健康に悪い影響を及ぼすとされる喫煙をEUが容認ないし黙認してよいということにはなりません。そのため、EUは自らの権限の範囲内で、様々な工夫をしながら、多くの政策を実施していますが、その詳細は次の項目で説明します。