1. 目的
2005年12月に制定されたサービス指令は、提供されるサービスの品質を高めるとともに、開業の自由 や サービス提供の自由 の実現を容易にすることを目的としている(第1条第1項)。
指令は、公務や公共サービスなど、まだ自由化されていないサービス分野を自由化ないし民営化を目的とするものではない(第1条第2項)。また、加盟国が市場を自由化していない分野のサービスには適用されないだけではなく、そのような市場の形成、財政、法的規制に関する加盟国の権利に触れるものではない(同第2項、第3項)。さらに、文化・言語の保護・奨励、メディアの多様性、刑法や労働法、失業対策について定めるものではない(同第4項〜第6項)。
2. 適用範囲
指令は、加盟国内で開業する者によって提供されるサービスにのみ適用される(第2条第1項)。他方、以下のサービスを初めとする、多くのサービスには適用されない(同第2項)。
・ |
公共サービス |
・ |
金融サービス |
・ |
テレコミュニケーション・サービス |
・ |
港湾・運輸サービス |
・ |
労働派遣サービス |
・ |
健康・医療サービス |
・ |
オーディオ・ビジュア、放送サービス |
・ |
宝くじ |
・ |
公権力の行使を伴うサービス |
・ |
社会サービス |
・ |
プライベート・セキュリティーサービス |
・ |
公証人や民事執行官の職務 |
さらに、例えば、以下のサービス分野や案件には適用されない(第17条)。
(参照) |
当初、欧州委員会は、健康・医療 や 郵便、電気、ガス の提供に関するサービスも指令の対象にしていたが、欧州議会の批判を受け、除外されるにいたった(欧州委員会の当初の提案については こちら)。 |
3. 認可手続の簡素化
域内におけるサービス提供の阻害要因を除去するという指令の目的を達成するため、加盟国は、認可や実際の提供にかかる手続・形式を見直す(第5条第1項)。欧州委員会は、全加盟国に共通の書式を作成することができる(同第2項)。
加盟国がサービス提供者に書類の提出を命じるとき、正本、認証つきの謄本、また、認証つきの翻訳の提出を求めてはならない(同第3項)。
さらに、加盟国は、サービス提供の認可や実施に関する受付先を一本化し、さらに、遠方からでも電子的に手続きをとることができようにしなければならない(第8条)。
サービス提供者の開業に関し認可手続を設ける場合は、他の加盟国の国民を差別してはならない(差別禁止の原則)。また、より重要な公益の保護という理由により正当化されなければならない。さらに、過度な規制は許されない(比例性の原則)(第9条)。認可手続や書式は明瞭で、事前に公表されていなければならず(第10条第1項)、所定の期間内に判断が下されないときは、認可されたものとみなされる(第3項)。なお、公益などのより重要な理由がある場合などを除き、認可期間を制限してはならない(第10条)。
指令は、サービスの提供についてだけではなく、サービスを受けることについても規定しているが(第19条以下)、後者に関し、加盟国は、受益者に事前の許可や宣言などの制約を設けてはならない(第19条)。
4. "The freedom to
provide services" の原則
欧州議会の提案を受け、いわゆる「本国法主義」は、"The freedom to provide services" の原則 に置き換えられた(第16条以下参照)。制定された指令は、加盟国は、サービス提供者が開業国以外でも自由にサービスを提供する権利を尊重しなければならないことを明定している(第16条第1項)。また、提供者が他の加盟国内で開業している場合は、自国内にも事務所や施設の設置を要請したり、認可証の所持を要請してはならない(同第2項)。なお、加盟国は、EC条約第46条が掲げる理由に基づき、サービス提供の自由を制約しうるが、加盟国の国民の開業を規制することは、「文化政策」上の理由から認められる。ただし、他の加盟国の国民を差別したり(差別禁止の原則)、過度に制限することは許されない(比例性の原則)。
サービス提供者の雇用条件(賃金水準を含む)に関し、加盟国は国内法ないし国内の労使協約を適用しうる。
5.指令の置き換え期限
加盟国は、指令の趣旨・目的に照らし、遅くとも2009年12月28日までに、国内法を整備しなければならない(第44条)。
|