2007年1月17日、ドイツの Angela Merkel 首相は欧州議会で演説を行った。2007年上半期のEU理事会議長として、首相は、@
コソボ や中東の和平・安定化に対するEUの貢献、EU・米国間の協力関係の強化、ロシアとのパートナーシップ協定の締結、ドーハ・ラウンド の成功、地球環境問題への取組みなどの外交問題、また、A ヨーロッパ型社会モデルの発展、雇用の創出、リスボン戦略の実施など、域内の問題を指摘しているが、これらはドイツが理事会議長国を務める2007年上半期の主要政策課題というよりは、EUが中・長期的に取り組まなければならない案件と捉えるべきであろう。なお、欧州憲法条約 に関し、Merkel 首相は、次の欧州議会選挙が行われる2009年までに発効させるビジョンを採択すべきであると提唱しており、メディアでも注目されいるが(参照)、このような見解はすでに主張されている。
演説の中で、首相は多くの政治家や文化人の発言を引用しているが、かつてJacques Delors (元欧州委員会委員長)が 「ヨーロッパには魂を与えなければならない」と述べたことに対し、魂は見つけなければならないとしている。そして、プラハ出身の作家
Karel Capek の表現を引用し、ヨーロッパは細かく分けられているため、我々はその大きさにではなく、その多様性に喜びを感じるとした上で、EUの魂は、異なるものを受け入れる「寛容性」(Toleranz)にあるとしている。Merkel
首相は、かねてからEU共通の価値の確立を訴えており(参照)、ヨーロッパを「寛容性の大陸」と形容する点は興味深いが、キリスト教がヨーロッパの基礎にあることも忘れずに指摘している。
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