WTO貿易自由化交渉の成立に向けた欧州委員会の呼びかけ
2003年9月、WTO加盟国はメキシコのカンクン (Cancún) で会合を開き、ドーハ開発アジェンダ (Doha Development Agenda) について協議したが、交渉は決裂した。この沈滞した局面を打開するため、Pascal Lamy 欧州委員(貿易政策担当)と Franz Fischler 欧州委員(農業政策担当)は、WTO加盟国の関係部局に書簡を送り(5月9日付け)、交渉成立に向けたEUの意気込みを示すとともに、相手国に協力を要請した。書簡の中では、以下の譲歩策について触れられている。
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EUは、すべての輸出補助金を見直す。
次回の交渉でも、農産物貿易の自由化が主要なテーマになると考えられるが、EUは、公正な競争を阻害する輸出補助金を大幅に削減する用意があるとされている。もっとも、EU農家に対する支援を中止するわけではなく、国際競争条件を悪化させない他の形態に変更されることになる。また、関税の引下げにより、世界市場をより自由化するとともに、既存の法の網を改善する必要があるとしている。
1992年のEU輸出補助金は、輸出額の25%(100億ユーロ)であったのに対し、2001年は5.2%(28億ユーロ)に減少している。現在進行中の農業政策改革により、その額はさらに削減される予定である。
A
いわゆる Singapore issues について、EUはより柔軟に臨む。
投資、競争、公共調達や貿易の円滑化に関しても (いわゆる Sigapore issues) 交渉を前進させるため、EUは、発展途上国に固有の問題と併せて協議することを止め、個別的に協議する用意があるとしている。特に、貿易の円滑易化に関し、EUは大幅な譲歩を見せている。
B
最も経済発展の遅れたWTO加盟国 (G-90 groupe) のために、欧州委員会はさらに譲歩する。 さらなる貿易の自由化を最も発展の遅れたWTO加盟国 (G-90 groupe)に求めてはならない一方で、先進国による貿易自由化の恩恵を与えるべきとされる。