2009年11月3日、チェコ憲法裁判所は、17名の上院議員によって提起されていた訴えを退け、リスボン条約批准の合憲性を確認した。また、大統領は遅滞なく批准書に署名する義務を負うと述べた(こちらを
参照)。これを受け、Klaus 大統領 は、同日15時に署名したことを自らのホームページで告知し、2008年6月以降の「独り芝居」を終わらせた。約15ヶ月前、アイルランドで実施された国民投票で新EU条約の批准が否決されると、反EU派として知られる
Klaus 大統領は、リスボン条約はもはや死んだと発言し、物議を醸した(詳しくは こちら)。その後、同国の国会両院が批准を承認しても、アイルランド国民によって支持されない限り、批准書に署名しないとしてきたが、2009年10月2日に再開された国民投票で、アイルランドは批准を決定した(詳しくは
こちら)。これを受け、チェコ元首は、EU基本権憲章の適用排除を訴えるようになるが、10月29・30日、EU加盟国はこの要請に応じた(詳しくは こちら)。Klaus 大統領が突きつけた最後の条件は、憲法裁判所によって合憲性が確認されることであったが、約1週間の審理を経て、司法判断が下されると、大統領も速やかに批准書に署名した。
これによって新条約はすべての加盟国で批准手続が終了し、翌月初め(12月1日)に発効する運びとなった(第6条第2項参照)。
なお、Klaus 大統領の署名を受け、イギリス保守党の Hague 外交専門家は、政権奪回後に国民投票を実施することは、もはや法的に不可能であると発言している(参照)。
11月5日付けのチェコの日刊紙 "Lidove noviny" において、Klaus 大統領の Hajek 顧問(元報道官)は、大統領は国家主権を回復するために批准書に署名したのであり、リスボン条約の発効後は、チェコのEU脱退をも検討していると述べた(参照)。現行EU法は、加盟国の脱退について定めていないが、リスボン条約は、加盟国が自主的に脱退する手続について定めており(リスボン条約発効後のEU条約第50条、こちらも参照)、法的に不可能ではない。もっとも、チェコの自主的脱退は非現実的である。そのため、国内の政治家からは、前掲の Hajek 氏はコメントする価値もないとする意見も出ている(参照)。
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