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欧州憲法


国 民 投 票 を 直 前 に 控 え た ル ク セ ン ブ ル ク

ルクセンブルク国旗 明日7月10日、ルクセンブルクでは、欧州憲法条約批准の是非を問う国民投票が実施される。同国の Juncker 首相 が指摘するように、ルクセンブルクでも批准が否決されるようなことがあれば、憲法条約の「生命」は完全に絶たれることになるため、約22万3000人の見解には、ヨーロッパ中の注目が集まっている。なお、ルクセンブルクでは投票が義務付けられている。投票は14時に締め切られ、18時頃には最終結果が発表される予定である。

 6月9日、政府が発表した調査結果によれば、批准反対派は、32%から38%に上昇しているが、依然として、46%の回答者が批准を支持している(詳しくは こちら)。ルクセンブルクでは、投票日から4週間以内に、アンケート調査結果を公表することが禁じられているため、それ以降、調査結果は発表されていないが、これは、批准反対派がどこまで台頭するか、さまざまな憶測をよんでいる。

 しかし、支配的な見解は、前掲の調査結果に大きな変動は生じず、批准が可決されると捉えている。EC裁判所、EC会計検査院だけではなく、欧州議会の事務局が設置され、EU統合の利益を最も強く受けているルクセンブルクは、伝統的に統合支持派が多い。また、周囲をその他のEU加盟国に囲まれ、天然資源にも乏しい小国にとって、EUの発展は、まさに国益に関わる重大案件である。なお、Juncker 首相 は、欧州統合の重要性だけではなく、EUは国内の年金政策や租税制度に干渉しえないことを強調するなど、自国の主権維持の可能性についても力説している(参照)。

 7月に入り、批准支持を公式に発表する市町村長も増え、99人に達している。また、欧州統合の恩恵を強く受けているサービス業界だけではなく、農業団体や環境保護団体も賛成の立場を表明している。なお、国民投票に先立ち、6月28日、ルクセンブルクの国会(一院制)は、全会一致にて、欧州憲法条約の批准を承認している(詳しくは こちら)。EU理事会議長の職から解放された Juncker 首相 も、国内の学校を訪問し、生徒との対話を実現するなど、精力的に活動しているが、批准が否決されれば、首相を辞任するとしている(詳しくは こちら)。

 他方、賛成派よりも早くキャンペーンを開始していた反対派 "Comité pour le Non" は、憲法条約の内容を批判しているが、近時は、EUの 東方拡大 に対する批判が比重を増しているとされる(参照)。約1年前の拡大によって、ポーランドからの移民労働者が増え、国民の仕事を奪いかねないとする不安は、隣国の フランス でとりわけ顕著であるが、ルクセンブルクにも及びかねない。左派組織からなる反対派は、フランスの著名な政治家を招待し、批准反対を国民に呼びかけている。また、オランダ のように、トルコとの加盟交渉の開始 が憲法条約の批准否決につながる危険性もある。

 国民投票がどのような結果になるにせよ、ここ数週間の議論の活性化は、民主主義の勝利であるとする見方もあるが、EUや国内政治への影響は計り知れない。22万3000人がどのような審判を下すか注目される。



リストマーク 2005年初夏の国民投票 

ルクセンブルク国会、批准を支持

ルクセンブルク国民、批准を支持 New

欧州憲法条約の批准状況

憲法条約批准手続のゆくえ



(参照) Die Presse v. 9. Juli 2005 (EU-Verfassung: Bei einem "Neen" muss Juncker gehen)



(2005年7月9日 記)