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欧州憲法



フ ラ ン ス 国 民 投 票、 憲 法 条 約 の 批 准 を 否 決

フランス国旗 2005年5月29日(日)に実施された国民投票で、フランス国民は欧州憲法条約の批准を否決した。事前のアンケート調査結果通り、約56%の有権者が批准に反対した。国民の関心の強さから、投票率も高くなることが予想されたが(参照)、実際には約70%に達し、1992年9月の国民投票(マーストリヒト条約 の批准)や 2004年6月の欧州議会選挙 の投票率を上回った。多数の国民の意思表示として、投票結果の意義は大きい。



New 公式の投票結果は以下の通りである。

  批准反対  54.87%(15,422,659人)
  批准賛成  45.13%

 なお、パリ、リオン、ストラスブールなどの大都市では、批准を支持する市民が60%を超えている(それぞれ約66%、61.35%、62.84%)。

 投票率は69.74%で、1992年9月の国民投票(マーストリヒト条約 の批准)(参照)を若干上回った。

(参照) Tagesschau.de ("EU-Verfassungsgegner feiern auf der Straße")



 今回の投票結果には、欧州統合そのものに対する批判よりも、国内政治に対する国民の強い不満が表れていると解されており(詳しくは こちら@ABCD)、Raffarin 首相の辞任が予測されている。なお、Chirac 大統領は継投するものと見られているが(詳しくは こちら)、2年後の大統領選挙に向け、フランス国内政治は大きく動き出すと解される(詳しくは こちら)。


New 2007年大統領選挙の前哨戦としての国民投票
Raffarin 首相の辞任
de Villepin 新首相の就任演説


 憲法条約への支持を訴えてきた Chirac 大統領と Barnier 外相は、開票の早い段階で、批准が否決されたことを認めるとともに、EU内における自国の地位の低下を指摘している。EC(EU)の現加盟国として、過去50年以上にわたり欧州統合を推進してきたフランスの求心力が弱まることは必須であるが、他方、これから始まるであろう「新しいヨーロッパ」の時代の扉を開いたのはフランスであり、同国の指導力は揺がないとみることもできる(詳しくは こちら)。しかし、一時的に、欧州統合が停滞することは否定できず、特に、さらなる市場統合に対するEU市民の不安(社会・労働水準の低下に関する懸念)をいかに取り除くかが重要課題になると解される(詳しくは こちら)。

 欧州憲法条約の発効には、全てのEU加盟国の批准が必要であるため、2006年11月の発効という当初の目標が達成されない可能性が強まっているが、欧州委員会の Barroso 委員長 は、批准手続に変更はないとしている。なお、オランダでは、3日後の6月1日に国民投票が実施されるが、同国でも反対派が過半数に達しており、フランスの結果は大きな影響を及ぼすものと解される(参照)。

 フランスは、2006年秋(つまり、すべての加盟国が批准を決定した後)秋に、再度、国民投票を実施することも検討されているとされるが(参照)、Barnier 外相は、@ 国民投票の投票率が高かったこと、また、A 批准反対派が賛成派より約10%も多かったことを考慮し、憲法条約の修正なしに再度、国民投票を実施する意義を否定している。

 欧州憲法条約は、EUの統治機構や立法手続を改正し(スペインとポーランドの持票数の削減こちら も参照)、拡大し続けるEUの意思決定手続を実効的にする一方、常任の EU大統領外相 を新たに任命し、対外的側面の強化を狙っている(EUの政治・外交力の強化)。フランス国民は、この点に反対していわけではないと解されないが、国民投票の結果を受け、EU改革は休止を余儀なくされるものとみられる。


    

フランスの批准見送り危機

フランス国民が憲法条約の批准に反対した理由

Q & A



(参照)

Yahoo! News v. 29. Mai 2005 ("Franzosen lehnen EU-Verfassung ab")

Yahoo! News v. 29. Mai 2005 ("Hohe Beteiligung an EU-Referendum in Frankreich")


 欧州憲法条約の批准

 2005年5月30日の時点で、リトアニアハンガリースロベニアイタリアギリシャスロバキアオーストリアドイツ の8ヶ国が批准を決定している。

 なお、すでに、スペインでは国民投票が実施され(2005年2月)、圧倒的多数(76.7%)の支持を得て、批准が可決されているが(詳しくは こちら)、国会の審議はまだ完全に終了していない(詳しくは こちら)。



フランスの批准見送り危機

フランス大統領、国内の青年とテレビ公開討論

フランス国民の3分の2、Chirac 大統領に失望

フランスの国民投票で批准が否決された場合

フランスの批准見送りがEU統合に与える影響

フランス海外県・領土の反応

批准に消極的な欧州統合推進派

2007年大統領選挙の前哨戦としての国民投票

リベラル化に対する左派の抵抗

右派の批准反対とトルコのEU加盟問題

フランスの国民投票とメディアの反応

Q & A

(2005年5月30日 記)