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ECのバナナ市場規則に関する法的問題 


 banana  10. GATT/WTO における紛争解決


リストマーク 1993年の小委員会(パネル)の判断

 中南米の5ヶ国(コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、ニカラグア、ベネズエラ)は、バナナ市場規則(Regulation 404/93)が発効する前に適用されていた一部のEU加盟国の輸入規則がGATTに違反するとして、GATTに提訴している。1993年6月3日、小委員会(パネル)は以下のような判断を下し、GATT違反を認定している(GATT document DS 32/R of 3 June 1993)


フランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、イギリスが行っている中南米産バナナの輸入数量制限は、GATT第11条第1項に反する。

ACP諸国産バナナの優遇は、最恵国待遇(第1条)に反するが、これは、第24条(関税同盟、自由貿易地域)によって正当化されない。もっとも、第25条の適用の可能性も否定されない。


 なお、この判断は、ECやACP諸国が反対したため、採択されなかった。 

 

リストマーク 1994年1月18日の小委員会(パネル)の判断

 バナナ市場規則の発効後、前掲の中南米5ヶ国 は、再度、GATTに提訴し、バナナ市場規則の違法性を指摘したところ、1994年1月18日、小委員会(パネル)は、次のように述べ、GATT違反を確認している(GATT document DS 38/R of 11 Feb. 1994)。


Lomé 協定に基づき、ECがACP諸国産バナナを優遇していることは、最恵国待遇(第1条)に反する。なお、この点について、小委員会はさらに次のように述べている。

"[N]othing in its report would prevent the parties to the Lomé Convention from achieving their treaty objectives, including the objective of promoting the production and commercialization of bananas from ACP countries, through the use of policy instruments consistent with the General Agreement."

小委員会によれば、ACP諸国産の優遇は、第24条(自由貿易地域)や第36条(発展途上国)によって正当化されうる。


バナナ市場規則によって、従来の重量関税は従価関税に変更されているが(参照)、これは、第2条に反する。

輸入ライセンスの交付に関し、バナナ市場規則は、EC産バナナを優遇し、第3国産バナナを不利に扱っているが、これは第3条第4項に反する。また、ACP産バナナと第3国産バナナの取り扱いが異なるのは、第1条(最恵国待遇)に反する。


 この判断もECの反対にあい、採択されていないが、WTO諸協定の発効後、紛争解決手続が強化されることに備え、ECは、1994年3月28・29日、提訴国である中南米の4ヶ国(コロンビア、コスタリカ、ニカラグア、ベネズエラ)と枠組み協定を締結し、紛争の解決を図っている。また、第4次Lomé協定 に基づくACP諸国産バナナの優遇を正当化するために、1994年10月、GATT第1条第1項(最恵国待遇)に関する Waiver を申請しているが、1994年12月9日、GATT締約国団によって許可されている(参照)。

 前述した枠組み協定は、1994年のGATTの譲許表の中に組み込まれているが、以下のように定めている。


輸入割当量の拡大(当初の200万トンより1994年は210万トン、それ以降は220万トンとする)

関税率の引き下げ(従来の1トンあたり100ECUから70ECUに引き下げ)

輸入割当量の49.4%は協定締約国(コロンビア、コスタリカ、ニカラグア、ベネズエラ)に与えられ、ドミニカ共和国やACP諸国の輸入割当量には9万トン、残りはその他の第3国に割り当てられるものとする。


 この枠組協定の締結によって、締約国間の争いは解決されるものとされたが、枠組み協定に合意しなかったグアテマラは、他の中南米諸国(エクアドル、ホンジュラス、メキシコ)や米国と共にWTOに提訴している。1997年9月25日、DSBは、枠組協定による輸入量の割当は、GATT第13条に反するとの判断を採択している(参照)。これを受け、輸入割当量は、以下のように変更された(詳しくは こちら)。


         ・ エクアドル

26,17%

         ・ コスタリカ

25,61%

         ・コロンビア

23,03%

         ・ パナマ

15,76%

         ・ その他

9,43%





EC裁判所の判断


 上述した枠組協定の適法性について、ドイツ政府はEC裁判所に判断を求めているが(意見手続[EC条約第300条第6項参照])、後に協定が発効するに至ったため、判断を回避している(Opinion 3/94, Bananas [1995] ECR I-4577, December 13, 1995)。

 後に、EC裁判所は、同じくドイツ政府の訴えに基づき、協定の適法性について審査しているが、協定はEC法に違反しないとの判決を下している(Case C-122/95, Bananas, March 10, 1998)。






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