1.定義
EU法上、連合協定とは、EUと第3国との間に特別な関係を築くことを目的として制定される国際条約を指す。例えば、旧植民地の発展を支援したり、将来のEU加盟を見据え、第3国の発展を支援するために締結される。ただし、この協定によって、第3国にはEU加盟国またはオブザーバーとしての地位が与えられるわけではない。なお、EU加盟国としての地位やEUへの従属性を明瞭に否定するため、近時は、「連合」(association)という文言は使用されていない。
海外領土や旧植民地との連合
かつて、EU加盟国は、ヨーロッパ外にも、広大な領土ないし植民地を保有していた。現在でも、一部の加盟国(デンマーク、フランス、オランダ、イギリス)は、海外に領土を有しており、その発展を支援するため、EUと海外領土間には、連合関係が構築されている(EUの機能に関する条約第198条〜第204条参照)。この連合関係は、前述した連合協定を基礎としない。つまり、EU・海外領土間の緊密な関係は、連合協定を必要とせず、EU加盟国との関係に基づき、直接、生じる。このような関係にある海外領土は、EU条約の第2附属書(Annex
II)内で列記されている。
なお、その後、多くの植民地が独立しているが(例えば、アフリカ諸国はフランスから独立している)、これらの国との間には、前述した連合協定が締結され、新たな連合関係が築かれている(参照)。
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2. 内容
EUの機能に関する条約第217条(EC条約第310条)は、連合協定の締結権限をEUに与えているが、これまで、以下の協定が締結されている。
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第3国のEU加盟に備えた協定 (加盟連合協定)
詳しくは こちら
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緊密な経済統合の形成を目的とした協定(自由貿易協定)
例えば、ECとEFTA間の人、商品、サービスおよび資本の移動を自由化するため、欧州経済領域(EEA)協定が締結され、1994年1月1日に発効している(EFTA加盟国であるスイスは加盟していない)。なお、オーストリアの永世中立主義などを考慮し、EUは、EUの機能に関する条約第217条(EC条約第310条〔連合協定の締結〕)ではなく、EUの機能に関する条約第207条(EC条約第133条〔通商条約の締結〕)を根拠条文に挙げている。
当初、同協定は、拘束力のある判断を下すことのできる司法機関の設立について定めていたが、これはEU裁判所の権限に競合し、また、EU法の独自性を害する恐れがあったため、EU裁判所(ECJ)は同協定の締結を容認しなかった(参照)。この点を改めた後、協定は1994年1月1日に発効している(参照)。
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途上国の発展を支援するための協定(開発援助協定)
いくつかのEU加盟国(フランス、ベルギー、オランダなど)は、主としてアフリカ大陸に植民地を保有していたが、旧植民地の発展を支援するため、1964年、EU(当時はEEC)はカメルーンの首都ヤウンデで、17のアフリカ諸国およびマダカスカルと協定を締結した。この連合協定は締結地にちなみヤウンデ協定と呼ばれるが、有効期間は5年に限定されていた。そのため、後にヤウンデII協定が締結された。
多くの植民地を持っていたイギリスがEUに加盟するようになると(参照)、EUは、1975年、ヤウンデII協定に代わり、ロメ協定を締結した。トーゴの首都ロメで締結された、この新しい協定には、アフリカだけではなく、カリブ海および太平洋上の46ヶ国(ACP諸国)が参加している。この協定は4回更新され、25年(1975〜2000年)に亘り適用されたが、1989年の東西冷戦終結や急速に進むグローバル化に対応した新しい協定の必要性が認識されるようになり、2000年、ベナンの首都コトヌーで新しい連合協定が締結され、現在に至っている。
コトヌー協定には、アフリカ、カリブ海および太平洋上の(ACP諸国)76カ国と、EUおよびその加盟国が加盟しているが(同協定は、EUが権限を有さない政治対話についても定めているため、EUとその加盟国が共同で締結している。こちらを参照)、パートナー国に貿易上の特権を与えるともに、欧州開発銀行の財政支援を通してその経済発展を支援すること、また、政治対話によって、人権の尊重、法の支配や国政の健全化を促すことなどを目的としている(参照)。
コトヌー協定は、政治的最高機関として、閣僚理事会を設けているが、同機関は大使部会によって保佐される。また、欧州議会議員とACP諸国の国内議会議員で構成される議会が設置され、諮問権限が与えられている。
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連合協定の規定事項については争いがある。例えば、EU理事会は、通商問題のみが対象になりうると主張しているのに対し(なぜなら、EC条約第310条は特別な事物管轄権をECに与えているわけではなく、特別な通商協定の締結について定めているに過ぎないため)、通説および欧州委員会は、以下の理由に基づき、連合協定の内容を通商問題に限定していない。
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EC条約第310条は、EU加盟よりも緩やかな形での統合を認めており、これは、通商政策の分野に限定されない。
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第3国との連合については、EC条約第182条〜第188条内でも定められているが(海外領土との連合 (前述参照) )、これらの規定は、通商協定に限定していない。
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EC条約第310条は、同条約の目的の範囲内において、第3国と連合協定を締結する権限をECに与える趣旨の規定である(EC裁判所の Demirel 判決[Case 12/86 Demirel [1987] ECR 3719, paras. 8-9]参照)。
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この問題は、連合協定が通商上の案件だけではなく、その他の事項についても定める場合に生じるが、実務では、混合協定 として、ECと加盟国の双方によって締結されることで解決されている。なお、協定が通商上の問題についてのみ定めているときは、ECが単独で締結しうる(通商政策に関する権限は、ECに完全に委譲されているため[EC条約第133条参照])。
連合協定は、EC条約の目的に反してはならない。また、その内容は、EC条約が定める事項に限定されるが、例えば、EC条約第39条以下は、労働者の移動の自由について定めていることから、連合協定には、締約国の国民(労働者)の移動に関する規定を盛り込むことができる。連合協定がECの権限外の事項を含むときは、@EC条約を改正するか(第300条第6項参照)、または、混合協定 として、ECと加盟国の双方によって締結することができる。例えば、中東欧諸国のEU加盟を前提にして締結された連合協定は、政治対話に関する規定を含んでいたため、混合協定として締結された(参照)。
連合協定は、ECと第3国双方の権利・義務について定めていなければならない。もっとも、この相互性の要請は厳格ではなく、特に、第3国の発展援助を目的とした連合協定の場合には、ECにのみ義務を課し、第3国のみを優遇することも認められる(Case
87/75 Bresciani [1976] ECR 129, paras. 22-23)。
協定の適用を実効的にするため、特別の制度や、閣僚理事会や議会などの機関を設けることも認められるが、EC法の独自性を害する司法制度を導入することはできない(Opinion
1/91 EEA [1991] ECR I-6079)。
3. 締結
連合協定は、通常の国際条約として、EUの機能に関する条約第218条(EC条約第300条)が定める手続に従い締結される。
締結手続について、詳しくは こちら
4.効力
連合協定は、発効後、EU法体系の一部となり、EUだけではなく、加盟国を拘束する。
効力について、詳しくは こちら
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