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2 0 0 8 年 6 月 の 欧 州 理 事 会


Sarkozy 大統領、EU拡大はリスボン条約の発効が前提


 2008年6月19・20日、EU加盟国首脳は、ブリュッセルで定例の会合(欧州理事会)を開き、アイルランド国民投票への対応策について協議したが(詳しくは こちら)、7月より議長国を務めるフランスの Sarkozy 大統領は、リスボン条約が発効しなければEU拡大もありえないと述べた(参照)。この発言は、新たな加盟国を迎え入れる前に、まず、機構改革を実現すべきとの理由に基づいているが、アイルランド国民投票の結果を受け、リスボン条約の批准手続が停滞することを警戒する意義も込められていると解される。アイルランドを除き、まだ 7ヶ国 が批准を決定していないが、いずれもEU拡大には積極的であるため、EU拡大は、ある種のインセンティブになると考えられる。

 なお、フランスと共に、EUが直面する危機の克服に尽力するとみられるドイツの Merkel 首相も、Sarkozy 大統領の見解に賛同している。これに対し、隣国クロアチアの加盟は、西バルカン半島の安定化に不可欠という立場から、オーストリアは両首脳の発言に反発している(参照)。アイルランド国民投票の後には、欧州議会の Pöttering 議長 もEU拡大を抑制する発言をしているが、同様に、クロアチアの加盟は認めるべきとしている(詳しくは こちら)。現在、EU加盟交渉が最も進展しており、近い将来の加盟が見込まれるのはクロアチアのみであるが(詳しくは こちら)、同議長の発言の背景には、トルコのEU加盟を牽制する意義も含まれている。

 確かに、第3国を受け入れる前に、EUは自らの改革を実現しなければならないが、従来より、EUは旧ユーゴスラビア諸国やトルコに対し、EU加盟の見通しを示し、これらの諸国の制度改革を奨励してきた。また、近時、欧州委員会は、トルコやクロアチアとの加盟交渉のテンポを速めることを宣言したばかりである。EUにとってのEU拡大の意義や、グローバル・プレーヤーとしてのEUの責任が問われている。





Link 議長国の公式サイト(英語)


リスボン条約の批准

 ・ アイルランドの国民投票