2008年6月19・20日、欧州理事会(EU加盟国首脳会議)は、@ 約1週間前のアイルランド国民投票において、リスボン条約の批准は否決されたが(詳しくは
こちら)、EUをより実効的かつ民主的にするには、同条約の発効が望ましいと判断し、まだ批准していない加盟国は手続を続行すると決定した。他方、A アイルランドへの対応策については、10月15日の欧州理事会で再協議することとした。
アイルランド国民投票の結果が発表されると、直ちに、欧州委員会の Barroso 委員長や独仏首脳は、その他の加盟国は批准手続を続行すべきであるとの声明を出した(こちらを参照)。上掲の欧州理事会決定も、リスボン条約の発効を断念しておらず、批准手続を継続するという点では一致しているが、まだ批准していない8ヶ国 に批准を要請するといった強い文言は盛り込まれていない。これは、国内の議論を過度に刺激し、手続を困難にすべきではないという未批准国(特に、チェコやスウェーデン)の立場を考慮したためと解される(参照)。中でも、チェコでは、Klaus 大統領 が、アイルランド国民投票の結果を受け、リスボン条約はもはや発効しえないと発言し、批准手続に暗い影を落としているが、リスボン条約の合憲性を問う訴えが憲法裁判所に提起されているため、政治的決断は司法判断の後に下される。このような状況を考慮し、欧州理事会の最終決議には脚注が設けられ、憲法裁判所によって条約の合憲性が確認されるまで、チェコは批准手続を完了しえないとすることが付記されるに至った。リスボン条約については、すでに、ドイツやイギリスの裁判所にも訴えが提起されており、そのこと自体は大きな問題ではないと解されるが、チェコの要請に基づき、前掲の脚注が設けられたことは、同国内の情勢が厳しいことを物語っている。
アイルランドについても、現在、国民投票の結果を分析し、今後の政策について検討している Cowen 政権に過度の負担を与えないようにするため、10月の会合まで結論を先送りする形をとっている。なお、これは、10月の会合で対策を決定するという趣旨ではなく、アイルランド政府の提案に基づき、再度、話し合うということである。その時点までに、打開策が見つかるかどうかは定かではないが、2009年6月に欧州議会選挙が実施されることを考慮すると、遅くとも、同年3月の欧州理事会までには、対策を決定する必要がある。
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