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E U 市 民 の 外 国 語 能 力


 2006年2月21日、欧州委員会は、EU市民の外国語能力に関する報告書を発表した。これは、2005年11月5日から12月7日かけて実施されたアンケート調査結果に基づいているが、調査はEU加盟25ヶ国と、ブルガリア、ルーマニア、クロアチア、トルコの計29ヶ国において、15歳以上の市民、2万8694人を対象にして行われた。


 それによれと、56%の市民が母語以外の外国語で会話を楽しむことができる。これは、2001年の調査時(EU15ヶ国)より、9ポイント上昇しているが、特に、ルクセンブルク、スロバキア、ラトビアでその割合が高くなっている(それぞれ、99%、97%、95%)。その理由として、欧州委員会は、ルクセンブルクのように、複数の言語(ルクセンブルク語、フランス語、ドイツ語)が一国の公用語にされていることや、近隣国との結びつきが強いことなどを挙げている。


 もっとも、44%の市民は母語しか話せない。アイルランド(66%)、イギリス(62%)、イタリア(59%)、ハンガリー(58%)、ポルトガル(58%)、スペイン(56%)の6ヶ国では、その割合が50%を超えている。


 外国語として最もよく使われているのは英語であり、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語がこれに続いているが、母語として最もよく話されているのはドイツ語である(18%)。




EU内で最もよく使われている言語

母語
外国語
合計
英語
 13% 38%
51%
ドイツ語
 18% 14%
32%
フランス語
 12% 14%
26%
イタリア語
 13% 3%
16%
スペイン語
 9% 6%
15%
ポーランド語
 9% 1
10%
ロシア語
 1 6%
 7%
 

資料:欧州委員会

 





 なお、EU市民の14%は、母語以外に、フランス語かドイツ語を理解できるとされる。フランス語はイギリスとアイルランドで最もよく使われている外国語である(それぞれ、23%、20%)。他方、ドイツ語は、チェコやハンガリーで最もよく使われる外国語となっている(それぞれ、28%、25%)。


      リストマーク フランス語の重要性の低下

 


リストマーク  「母語ぷらす2」

 なお、欧州委員会は、母語以外に2つの言語の習得を長期的な目標に設定しているが、それに賛同した回答者は50%で、46%は反対している。なお、この要件を満たすと答えた者は28%であるが、とりわけ、ルクセンブルク(92%)、オランダ(75%)、スロベニア(71%)でその割合が高かった。

 母語以外に、3つの言語をマスターしている者は11%であった。このように多くの言語を駆使しうる者は、若年層に多く、留学経験のある高学歴者とみられている。


 半数以上の市民は、すでに6歳の頃から外国語を学んでおり、外国語能力の重要性は強く認識されているが、過去2年間に外国語を学んだか、または、それを向上させた者は、18%に過ぎず、学習意欲の低さが浮き彫りになっている。




リストマーク  EUの公用語

 現在、EUは、アイルランドを除く、全加盟国の言語を公用語に採用している。これは、各国の文化の多様性を重んじるためであるが、そのため、公用語数は20にものぼり(精しくは こちら)、翻訳や通訳の負担が大きな問題になっている。





区切り線



(参照) 欧州委員会の報告書 "Europeans and their Languages", February 2006

在独欧州委員会代表部の公式サイト



フランス語の重要性の低下 

EUの公用語


EUの将来

EUの直面する危機




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(2006年5月19日 記)