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トルコがEUに加盟した場合の影響 |
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EU機構制度
欧州議会 |
欧州議会の議席は、各国の人口を考慮して配分されているが、現在の人口増加率が維持されるならば、EU加盟が実現する頃(早くても10年後)、同国はEU最大の高人口国に発展しうる(参照)。そのため、欧州議会にも最も多くの議員を選出するようになる可能性がある。もっとも、議会では、国境を越えて党派が形成され、議員は所属する党派の枠内で行動するため、トルコ出身の議員が単独で行動を起こすことはないか、または、起こしたとしても、効果的ではないと解される(参照)。 |
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EU理事会 |
EU理事会の特定多数決手続において、トルコには、独、英、伊、仏に並び、最も多くの持票数が与えられるものと解される(参照)。また、人口数が同時に考慮される場合にも (EC条約第205条第4項)、高人口国のトルコは、大きな影響力を行使するものと解される。
独立トルコ委員会 (参照) は、トルコのEU加盟が実現しても、(欧州憲法による立法手続をも含めて)、EUの諸制度を大幅に変更する必要はないとしているが(参照)、欧州憲法第 I-24 条第1項によれば、EU理事会の特定多数決は、55%の加盟国が賛成し、これらの国の国民が、全EU市民の65%に相当するときに成立する。そのため、高人口国のトルコにとって、法令の制定を阻止することは決して困難ではない。また、同国のEU加盟が実現する頃には、ルーマニアとブルガリアも加盟しているものと解されるが、28か国体制下では、従来の加盟15か国のみの賛成で法案を可決することはできない。これが欧州憲法(条約)の批准・発効に悪影響を及ぼしかねないことは、すでに指摘されている(参照)。
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トルコとの加盟交渉の開始が正式に決定されたことを受け(参照)、ドイツ野党 CSU に所属する6名の連邦議会議員は、議会が憲法条約の批准について採決を取るときには、反対票を投じるとの声明を発表した。その理由として、直にトルコはEU内で最大の加盟国になり、EUの意思決定を牛耳る危険性を挙げている。また、年間、250億ユーロの補助金の支出、また、トルコの欧州議会議席数は96となることも指摘されており、欧州憲法条約には、トルコのEU加盟が適切に反映されていないとしている。
欧州憲法条約の批准に先立ち、国民投票を実施する国もあるが、ドイツでは国会(連邦議会)によって審議される(参照)。
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(参照) Der Spiegel |
(2004年12月23日 記) |
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また、前述した欧州憲法によれば、35%のEU市民の反対があれば、法の制定を阻止しうるが、トルコの加盟が実現する頃、EUの経済支援を受ける加盟国(EUへの支払額よりも、受取額の方が多い国)の国民は、42,7%に達し、これらの国だけでも、法案を葬りうることが指摘されている(参照)。
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欧州委員会 |
現行法上、欧州委員会のメンバーは、各国より1人ずつ選任されており、トルコのEU加盟は特に大きな影響を及ぼさない。EU加盟国数が27を超えるときは、委員は、全加盟国より1人ずつ擁立されることにはならず、互選される (参照)。
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経済問題
こちら を参照
人の移動
Friends of Europe の研究によれば、トルコがEUに加盟する場合、同国からその他の加盟国へは、年間で約22万5千人、また、2025年までには、約290万に達するものと考えられている。なお、2025年のEU人口は、570万と推定されている(290万人はその0.5%にあたる)〔参照〕。
トルコとEU |
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トルコ |
従来のEU加盟国 |
新規加盟国 |
人口 |
6960万人 |
3億7840万人 |
7430万人 |
1人当たりのGDP |
5500ユーロ |
24010ユーロ |
11150ユーロ |
全労働者に対する
農家の割合
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33,2% |
4,0% |
13,4% |
統計 DER SPIEGEL, Nr. 8, 16. Februar 2004, Seite 97
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参照 Der Standard
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