ドイツの保守系政党 CDU と CSU は、トルコのEU加盟に反対する一方で、統合関係の重要性は認めている。そのため、EU加盟の実現ではなく、「特権的パートナーシップ」(Privilegierte Partnerschaft)の構築を提唱している(参照)。この「特権的パートナーシップ」の内容は、以下の通りである。
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EU・トルコ間には、すでに 関税同盟 が設立されているが、さらに自由化を進め、自由貿易地域に発展させる。
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特に、市民社会、環境保護、中小企業の助成、健康、教育といった政策分野においても、共同作業を深化させる。
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EUの 外交・安全保障政策 にトルコを引き入れる。
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テロ、過激派、組織的犯罪、行政・司法機関の協力(参照)、また、諜報活動に関し、トルコとの協力関係を強化する。
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他方、農業政策や地域・構造政策の分野では統合を推し進めず、EUの基金による支援は行わない(参照)。 |
なお、トルコは、「特権的パートナーシップ」という代替案に満足しておらず(参照)、もし、そのような地位しか与えられないのであれば、EUとの加盟交渉は中止するとしている。
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ドイツ政府とベルギー政府の立場
2004年12月1日、ドイツの Schröder 首相と ベルギーの Verhofstadt 首相は、ベルギーで会談を行った。そして、その後の記者会見において、両国は
「特権的パートナーシップ」(Privilegierte Partnerschaft)という代替案に賛成していないと述べた。また、12月16・17日の欧州理事会では、トルコとの加盟交渉開始を支持し、2005年内の交渉開始を提唱した。
(参照) ドイツ政府の公式サイト
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フランス政府とオーストリア政府の立場
当初、フランスの Chirac 大統領は、特権的パートナーシップに反対していたとされるが、所属政党内の圧力を受け、この代替案を支持するようになっているとされる。2004年10月末の独仏会談でも、これを示唆していたが、この時点では、パートナーであるドイツ政府は、Chirac
大統領が代替案を考慮に入れ始めていることを否定していた。しかし、12月2日の会談の席では、特に、人権問題を理由に、トルコが加盟条件を完全に満たすことができない場合は、その他の選択肢について検討すべきであると
明瞭に述べた。また、フランスでは、トルコのEU加盟問題について国民投票を実施する予定であることを明らかにした。
特権的パートナーシップ構築の可能性は、すでに、オーストリア政府によって支持されている(参照)。
(参照) |
Die Welt v. 3. Dezember 2004 (Chirac rückt
von Türkei-Beitritt ab)
Chirac 大統領の見解について こちらも 参照 |
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(2004年12月3日 記) |
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欧州委員会の立場
先ごろ、EU拡大担当の欧州委員に就任した Olli Rehn 氏(フィンランド)は、EU加盟に代わる選択肢は導入されるべきではないとし、フランス・オーストリア両国の提案に反対する立場を示した。
詳しくは こちら
(参照) |
Die Presse v. 4. Dezember 2004 (Kommission hilft Ankara) |
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(2004年12月4日 記) |
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