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トルコ国旗 トルコのEU加盟問題

ドイツ・トルコ経済フォーラム

Merkel首相、CDU党首としてはトルコのEU加盟に消極的
ドイツ国旗



 2006年10月3日、トルコとのEU加盟交渉が開始されてから1年が経過したが(参照)、2日後の10月5日、ドイツの Merkel 首相、ドイツ・トルコ経済フォーラムに出席するため、イスタンブールを訪問している。ドイツを含むEU加盟国とトルコの間には、すでに10年前に関税同盟が設けられており(詳しくは こちら)、貿易の自由化が進展しているが、ドイツ・トルコ間の年間貿易額(2005年)は210億米国ドルにも及ぶ。トルコ経済は急速に発展しており(2005年の成長率は7.9%)、貿易パートナーとしての重要性も高まっている(参照)。

 イスタンブール滞在中、Merkel 首相、トルコの Erdogan 首相 や各宗教の代表者とも協議することができ、経済分野以外での成果も上げることができた。10月6日のプレス・コンファレンスでは、懸案の トルコのEU加盟問題 についても言及し、ドイツ首相としては、トルコのEU加盟を支援するが、ドイツ・キリスト教民主同盟(CDU)の党首としては、特権的パートナーシップ の構築を提唱すると率直に述べた。ドイツの保守系政党より提唱された特権的パートナーシップ (Privilegierte Partnerschaft) は、"imitiyazli ortaklik" と訳され、EU加盟国としての地位を大幅に切り詰めた限定的な地位を指すことから、トルコ国内の反発も強かったとされているが(参照)、ドイツ首相として国際法上の義務を誠実に果たすとする発言は、喝采をもって迎えられた。なお、Merkel 首相 は、加盟交渉は結果を先取りしてはならず、トルコがEU加盟要件を見たさなければ、加盟は実現しない点も明確にしている。 なお、プレスコンファレンスの翌日(10月7日)、Merkel 首相は連邦政府の公式サイトで、2007年上半期(ドイツEU理事会議長国期間)の主要テーマについて発表しているが、その中でも、トルコのEU加盟が保障されているわけではないことを明瞭に述べている(詳しくは こちら)。


 プレス・コンファレンスでは、さらに、トルコは、アンカラ議定書 を誠実に履行し、キプロスからの商品の移動の自由を保障しなければならないことを強調している(参照)。この問題に関し、従来より、トルコ政府は、トルコ系キプロス(北キプロス)の孤立が解消されない限り、EU側の要求 に応じられないと反論しているが、Merkel 首相、複数の問題が同時に解決されるよう、感情的にならず、建設的な協議を進めるべきであると述べている。さらに、ドイツ国内には200万人以上のトルコ系住民が居住しているが、ドイツ社会にうまく統合できていないことをも踏まえ、異宗教・異文化間の対話促進の重要性を訴えている。



(参照)  Deutsche Bundesregierung, 6. Oktober 2006 (EU-Beitrittsverhandlungen mit Türkei ergebnisoffen)

FAZ v. 8. Oktober 2006 (In der Höhle des Löwen)

バイエルン首相、トルコとの加盟交渉凍結を訴える




(2006年10月12日 記)


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