2006年11月13日、ブリュッセルでEU加盟国外相会議(EU理事会)が開催されたが、オーストリアの Plassnik 外相は、トルコがいまだ
アンカラ議定書 を実施していないことを取り上げ、同国が約束を守らないならば、加盟交渉を休止すべきであると発言している(参照)。外相会議に先立ち、欧州委員会は、2006年末までに、トルコがキプロスからの船舶や航空機の入港を許可しないならば、制裁措置の発動もありうると述べているが(詳しくは こちら)、Plassnik 外相は、このような制裁の一環として、2005年10月に開始されたEU加盟交渉の中断を提唱するものとして注目されている。なお、同外相は、加盟交渉はすでに中断しているに等しいとも捉えている(参照)。
このような見解も聞かれる一方、ドイツの Steinmauer 外相は、13日の会議の席上、トルコとの交渉中断を求めた者はおらず、むしろ、トルコとの接点を保つことが重要であることで、加盟国の立場は一致していると発言している(参照)。
オーストリアがトルコとの加盟交渉に異議を述べるのは、今回が初めてではなく、2005年秋には、加盟交渉の開始を遅らせた(詳しくは こちら)。また、オーストリア国民の中に懐疑論が根強く(詳しくは こちら)、緑の党を除く主要政党は、トルコのEU加盟に反対している(詳しくは こちら)。
もっとも、オーストリア国内においても、政府が最後まで抵抗するとは解されておらず、Plassnik 外相の発言は、むしろ、オーストリア国民に向けたメッセージと解される(参照)。そのため、トルコ政府は外相発言を冷静に受け止めているとされる(参照)。なお、交渉の中断は、EU・トルコ間の関係だけではなく、中東の安定化にも大きな影響を及ぼすと解されるため、非現実的であるとさえ言える。
トルコとの加盟交渉について、EU加盟国政府は、12月中旬の欧州理事会で決定する予定であり、それまでに欧州委員会は提案を行うとされている(詳しくは
こちら)。オーストリアの日刊紙 Die Presse は、12月6日に委員会の見解が示されると報じているが(参照)、これを受け加盟国外相会議(EU理事会)は12月11日に開催され、14・15日の欧州理事会に備えることになる。なお、フィンランドの Tuomioja
外相は、12月の欧州理事会が「トルコ会議」になることを牽制している(参照)。
|