2006年11月29日、欧州委員会は、トルコとのEU加盟交渉を部分的に中断すべきであるとの見解を示した。これは、2005年7月に締結された
アンカラ議定書 をトルコがまだ批准・履行しておらず、商品の自由な移動(キプロスへの船舶や航空機の乗り入れの自由)が保障されていないことによるが、状況の打開に向け交渉に当たってきた
フィンランド (現EU理事会議長国)は、11月27日、トルコとの協議は決裂し、2006年内の成果は見込まれないと発表している(詳しくは こちら)。このような状況を踏まえ、委員会は、キプロスとの関係において、アンカラ議定書 が完全に実施されるまで、以下の8分野の加盟交渉を開始すべきではないと判断した。
・ 商品の移動の自由(加盟交渉の第1章)
・ 開業とサービス提供の自由(第3章)
・ 金融サービス(第9章)
・ 農業 と 地域開発(第11章)
・ 漁業(第13章)
・ 運輸政策(第14章)
・ 関税同盟(第29章)
・ 外交(第30章)
加盟交渉は全部で35の章に分けられており、委員会は、8つの章の交渉延期を提唱しているに過ぎないが、これは、交渉の完全中止がトルコの安定化や制度改革を阻害し、また、EU・トルコ間だけではなく、EU・中近東諸国間の外交関係に取り返しのつかない悪影響を及ぼすことを避けるためであると解される。なお、欧州委員会は、アンカラ議定書 の完全な履行が確認されるまで、すでに開始されている分野やその他の分野の交渉も終結させてはならないと提案している。いずれにせよ、トルコとの加盟交渉は、Rehn
欧州委員が述べているように、当初の予定より、ゆっくりと進められることになると解される(参照)。
12月11日、EU加盟国外相(EU理事会)は、この提案について審議し、同月14・15日に開催される加盟国首脳会議(欧州理事会)で最終的な判断が下される予定である。Die
Presse 紙によれば、ドイツやフランスは委員会案に賛成しているとされるが、オーストリアはより厳格な措置を望んでいるとされる(参照)。また、当事国であるキプロスが加盟交渉の即時中断を提唱するかどうか注目される。
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