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欧州憲法


膨大な量の憲法条約に対するEU市民の理解度


 欧州憲法条約は、全448条からなる(ドイツ語版では約7万単語[参照])。諸外国の憲法に比べ、著しく多くの規定を設けられているため、最初から最後まで読み通し、適切に理解することは、専門家にとっても決して容易ではない(参照)。そのため、EU法体系を理解しやすくするという憲法条約の使命(参照)は完全に達成されているとはいえない。



 欧州委員会 の委託を受け実施されたアンケート調査によると、調査当時(2004年10月から11月)、憲法条約(草案)について聞いたことはあるがよく知らないと答えたEU市民は56%、詳しく知っているとする者は11%、聞いたことがないとする人は11%であった。加盟国別で見ると、国民投票 の実施が予定されている オランダ やルクセンブルク で認識度が高く、逆に、イギリスやキプロスでは、聞いたことがないとする回答者が過半数に達した(それぞれ50%、65%)。

 憲法条約(草案)を支持するかという質問には、49%の回答者が支持すると答えているが(不支持は16%)、憲法条約の内容を良く知っている市民の支持率は60%、逆に、聞いたことがないという市民の支持率は22%に過ぎない。憲法条約の内容をよく知る市民は、批准に賛成していると言える。


 2005年5月ないし6月の国民投票で、フランス国民オランダ国民 は、憲法条約の批准を否決しているが、アンケート調査時(2004年10月〜11月)、フランス国民の支持率は48%、オランダでは63%と反対派(それぞれ17%、11%)を大きく上回っている。

アンケート調査


(参照) Eurobarometer surveys: "The future Constitutional Treaty: full report"





 EU(EC)の諸機関や加盟国政府だけではなく、メディアも憲法条約の要点について解説し、EU市民の認識を深めることに貢献している。特に、国民投票が実施されたフランスでは、メディア報道が過熱し、憲法条約に関する情報は、国民にも広く行き渡ったと解されている(詳しくは こちら)。しかし、このような例外を除けば、EU市民の関心や認識度は決して高くなく、より徹底した広報活動が加盟国政府には求められている。




(参照) オーストリア国民の見解


(2005年6月3日 記)