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欧州憲法

フランス
欧 州 憲 法 条 約 の 批 准 否 決 か ら 1 年


フランス国旗 2005年5月29日に実施された国民投票で憲法条約の批准が否決されてから1年が経過したが、ドイツの日刊紙 Die Welt によると、フランスでは、依然として批准反対派が過半数を占めている。フランスの日刊紙 Le Parisien の委託を受け行われたアンケート調査では、52%の回答者が憲法条約を支持しないと答えており、2005年5月の国民投票時とほぼ同じ結果となっている(当時の反対票は54.87%)。なお、当時、反対票を投じた者の98%は現在でも支持しないとしているのに対し、賛成派の支持率は89%に低下しているとされる(参照)。


 2005年5月の国民投票は、かねてより次期大統領選挙(2007年前半)の前哨戦として注目されてきたが(参照)、大統領選を1年後に控え、憲法条約の「将来」ないし「救済」は脇に追いやられている。また、2005年秋の暴動、2006年春の労働法改正に関するデモ、また、与党内のスキャンダルといった重大な国内問題に国民の関心は移っている(参照)。

 もっとも、EU統合は、外交政策上の最重要課題であり、視野から除外しえないのも事実である。国民投票の結果を受け、辞任した Raffarin 首相の後任に就いた de Villepin 氏 は、憲法条約に「新たなチャンス」を与えるため、もう一度、国民投票を実施すべきであると述べているが、Chirac 大統領はこれに賛成していない(参照)。他方、同じく大統領選出馬を視野に入れている、与党 UMP のSarkozy 党首(内相)は、2006年2月、ベルリンにおいて、EU機構制度の早急な改革を訴え、その後に憲法条約の代替案について検討すべきであると述べている(参照)。また、伝統的な 独仏協調 を、イギリス、スペイン、イタリア、ポーランドを加えた6ヶ国体勢に発展すべきとしている。


 他方、野党(社会党)内では、党是に従わず憲法条約への反対を表明し、勝利した Fabius 前首相 が求心力を回復している。現在の EUの危機 を招いたのは左派であるとの批判を退けるべく、憲法条約に代わる案を提唱するとともに、EUに起動力を与えることのできる者こそが大統領にふさわしいとして、逆に与党幹部を批判している。さらなる市場統合ないし国際化は、国民から職を奪いかねないとする不安を取り込むことができれば(参照)、大統領選を優位に進めることも可能であるが、憲法条約そのものではなく、EU統合のあり方が大統領選の主要テーマの一つになると解される。




(参照)

Die Welt v. 30. Mai 2006 (Franzosen lehenn EU-Verfassung nach wie vor ab)


憲法条約批准手続のゆくえ 

フランスの批准見送り危機



(2006年6月3日 記)