単 位 法 律 関 係 の 決 定 と 準 拠 法 の 指 定


 以下の問題について、我が国の民法はどのように定めているか答えなさい。


@

結婚後、夫婦は姓を統一しなければならないか、それとも、夫婦別姓が認められるか。

A

結婚後、夫婦は同居しなければならないか。また、一方の要請にもかかわらず、他方が同居を拒むことは正当な離婚事由となるか。

B

未成年者でも結婚すれば、成人として扱われるべきか。


ポイント 

 通常、未成年者は親権者(一般的には両親)の監督に服すが(民法第818条参照)、結婚し、新しい世帯を築く場合であれ、従来通り、親権者の監督を受けるか(参照)。



 これらの問題について、民法は、それぞれ規定を設けている。

 @の問題  ⇒  第750条(夫婦の氏)
夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

 Aの問題  ⇒  第752条(同居・協力・扶助義務)
夫婦は同居し、互 いに協力し扶助しなければならない。

 Bの問題  ⇒  第753条(婚姻による成年擬制)
未成年者が婚姻をしたときは、これによつて成年に達したものとみなす。


 日本国内に居住する夫婦(共に日本人とする)について、上掲の問題が生じた場合は、我が国の民法に従い解決すればよいと考えられるが、夫婦の居住地が外国であったり、夫婦の国籍が異なる場合は、日本法を適用してよいとは限らない。なぜなら、このような渉外事件では、事件の国際性に鑑み、準拠法を決定する必要性があるためである(詳しくは こちら)。

 準拠法は適用通則法(国際私法)に従い指定されるが、適用通則法は民法のように、上掲の諸問題について個別に規定しておらず、いずれも「婚姻の効力」に関する問題として、まとめて規定している(第25条、こちら を参照)。
つまり、適用通則法は、ある概括的な法律関係ごとに、準拠法を指定している、このように類型化された法律関係を単位法律関係 とよぶ。



問 題 単位法律関係 適用通則法 準拠法の決定

@ 夫婦の氏
A 夫婦の同居義務
B 婚姻による成年擬制


矢印

婚姻の
効力

矢印

第25条

 

法例第14条


矢印

@

まず、夫婦の本国法が同じかどうかを検討し、同じであれば、その本国法

A

同じでなければ、夫婦の常居所地法が同じかどうかを検討し、同じであれば、その常居所地法

B

同じでなければ、夫婦に最も密接に関係する地の法(最密接関係地法)





 適用通則法に従い準拠法を決定するには、まず、ある具体的な法律問題は、いかなる単位法律関係に該当するか検討しなければならない。

  question 問題

 



問 題 単位法律関係 適用通則法 準拠法の決定

18歳のドイツ人

18歳のドイツ人は成年か?

矢印 行為能力 矢印

第4条第1項

矢印 本国法
つまり、ドイツ法

国際結婚

16歳の日本人男性とアメリカ人女性は結婚しうるか
矢印
婚姻の
成立要件

婚姻適齢 )

矢印 第24条
第1項
矢印 各当事者の
本国法
つまり、日本人男性については日本法
米国人女性については米国法

養子縁組

養子縁組には養子の実の親の同意が必要か
矢印 養子縁組の成立 矢印 第31条 矢印 縁組時の養親の本国法
なお、養子の本国法の要件を満たす必要がある。

相続

遺言がない場合の相続はどのように行われるか
矢印 相続 矢印 第36条 矢印 被相続人の本国法





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