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ユスティティア EUの教育・青少年政策




H.  判 決 の 確 定 と そ の 効 力


1. 判決の確定

 係属している審級の訴訟事件の全部または一部を完結させる判決を終局判決と呼ぶが(→ 中間判決 との違いを確認せよ)、同判決は、上訴や異議申立て(第356条、第357条参照)などの通常の不服申立方法によっては、もはや取り消される余地がなくなると確定する。つまり、上級審への上訴などによって、原審の判決(これを原判決と呼ぶ)の確定は遮断されるが(第116条第2項)、上訴期間が経過すると、判決は確定し、その当否を争うことは許されない。なお、その例外として、再審の申立てが認められる(第338条参照)。また、第117条の要件が満たされるときは、判決の確定後に判決の変更を求め、提訴することが特別に認められる(定期金〔一括ではなく、(毎月)分割して支払われる金銭〕による賠償を命じた確定判決の変更を求める訴え)。

  なお、上訴や異議申立てが許されない判決(例えば、上告審の判決)は、言い渡し時に確定する。当事者間で控訴しないことが合意されている場合(不控訴の合意)も同様である。


 上訴が許される場合は、以下のいずれかのときに原判決は確定する。

上訴期間(第285条、第313条、第357条)が経過したとき(第116条第1項)
 例えば、控訴(第2審への上訴)は判決書等の送達を受けた日から2週間以内に提起しなければならず、この期間(不変期間)が経過すれば原判決は確定する。

 不変期間とは、裁判所によって伸縮することが許されない期間を指すが(第96条第1項但書)、遠隔地に住所または居所を有するものに対しては、期間を付加することが認められる(第96条第2項〔付加期間〕、訴訟行為の追完について、第97条参照)。

上訴期間の経過前であれ、当事者が上訴権を放棄するとき(第284条、第313条、第358条)


 また、上訴が提起されたが、後に取り下げられる場合や、上訴却下の判決が下され、これが確定したときは、原判決は上訴期間の経過時に遡って確定する。上訴棄却判決が下され、確定したときは、原判決も確定する。



2. 判決の効力(判決効)

 判決より以下の効力が生じる。

@ 裁判所に対して生じる効力(自己拘束力)

 判決が言い渡されると、確定する前であれ、裁判所は理由なくこれを撤回したり、変更することが許されない(自己拘束力)。もっとも、判決に計算間違い、誤記やその他の明白な表現上の誤りが含まれているとき、裁判所は、職権または申立てにより、いつでも判決を更正することができる(更正決定〔第257条第1項〕)。また、法令違背について裁判所自らが気づいたときは、言渡し後1週間以内に限り、かつ、新たに口頭弁論をする必要がない場合に限り、変更することができる(第256条)。

A 当事者に対して生じる効力(形式的確定力)

 判決が確定すると、当事者は、もはや上訴によって不服を申し立ることができない。

B 判決で示された事項について実体的に生じる効力(実体的効力)

  判決が確定すると、訴訟の対象である権利・義務ないし法律関係(つまり 訴訟物)が確定し(既判力)、相手方当事者が判決に任意に従わないときは、裁判所に判決の執行を求めることができる(執行力)。また、形成の訴えに関しては、判決の確定によって、法律関係の発生・変更・消滅が生じるため(形成力)、裁判所にその執行を求める必要はない。

 C 判決の確定より付随する効力(付従的効力)

 上掲の実体的効力は、確定判決の本来的な効力であるが、それ以外にも、判決の確定という結果に付従し、ある一定の効力が生じる。これを 付従的効力 と呼ぶが、訴訟法に基づくものと(民事訴訟法第46条の参加的効力、人事訴訟法第9条、第26条の失権効など)と、実体法によるものがある(民法第157条第2項の時効の再進行、同第174条の2の短期消滅時効の長期化など)。


 以下では既判力について説明する。


3. 既判力

3.1. 意義・根拠

 確定した終局判決で示された判断は後訴裁判所や当事者を拘束する。そのため、後訴裁判所や当事者は、すでに確定した終局判決に矛盾する判断や主張を行うことが許されない。これを確定判決の 既判力 ないし 実体的確定力 と呼ぶ。

 既判力は訴訟手続が適法であり、かつ、当事者の手続法上の権利が適切に保障されていた場合に生じる。この要件が満たされるとき、確定判決の内容が不当であっても(不当判決)、もはやその内容の当否を訴訟上で争うことは許されなくなるが、これは @ 紛争の蒸し返しの予防、また、A 当事者には手続的機会が十分に保障されていたことに基づく。


3.2. 範囲 

(1) 主観的範囲

 既判力は訴訟当事者に対してのみ生じ、当事者以外の第三者が確定判決に拘束されることはないが、例外的に、第三者にも拡張される場合がある(⇒既判力の拡張)。

(例) 他人のために第3者が訴訟担当した場合におけるその他人(第115条第1項第2号)

選定当事者によって訴訟が追行される場合の選定者(第30条)

口頭弁論終結後の承継人(第115条第1項第3号)

 例えば、原告が被告に建物の明け渡しを求め提訴し、原告勝訴の判決が確定した後に、被告から建物を借り受け占有する者


  訴訟脱退者(第48条)


 なお、形成判決(例えば、離婚請求を認容する判決)の効力は、当事者間だけではなく、すべての者に対し及ぶ(対世効)。


(2) 客観的範囲

 裁判所の判断のうち、主文に含まれる判断についてのみ既判力は生じる(第114条第1項)。つまり、訴訟物に関する裁判所の判断についてのみ、後訴裁判所や当事者は拘束される。
 

   ◎ 判決書の例


 なお、判決主文には、例えば、「被告は原告に金○○円支払え」または「原告の請求を棄却する」と簡潔に記されるため、それだけでは裁判所の判断の内容を確定することはできない。それゆえ事実および判決理由を参照する必要があるが、第114条第1項が既判力は「判決主文に
包含されるもの」に生じると規定しているのは、そのためである。

 これに対し、判決の理由には既判力は生じない。これは、理由中の判断で扱われるのは、訴訟物に比べると、2次的な問題であり、それについてまで既判力が生じるとすれば、当事者は徹底して争わなければならないといった負担等を考慮したためである。

 例えば、XはYから土地を購入したが、Yが登記を移転しないため、その移転を求め提訴するケースにおいて、裁判所がXの請求を認め、「YはXに移転登記せよ」という主文の判決を下す場合、既判力は、この判決主文に含まれる判断にのみ及び、売買契約が完全に有効に成立し、Xが所有権を取得したことまで確定されるわけではない。そのため、Yは後訴を提起し、売買契約の有効性やXへの所有権の移転を争うことができる。これを防ぐため、Xは前訴において、自らの所有権の確認を同時に求めるか、または、その確認を求める 中間確認の訴え を追加することができる(第145条)。

 上のケースの前訴で、Xが敗訴する場合、判決主文には「Xの請求を棄却する」と記載され、既判力はこの判決主文、つまり、Xは移転登記を請求しえないことにのみ及ぶため、後に土地の明渡しを求め提訴することが認められる。ただし、最高裁は、紛争の蒸し返しを避けるため、前訴で土地の所有権の帰属が主たる争点として争われている場合には、信義則 に基づき、後訴で所有権の存在を主張することは許されないとしている(最判昭和52年3月24日、金判548号39頁)。


〔問題〕

 AがBに建物の明け渡しを求めて提訴したところ、Bは建物を賃貸しているとして争った。訴訟ではBの賃借権が主たる争点となったが、裁判所はBが賃借権を有することを認定し、Aの訴えを棄却した。これを受け、AはBに賃料の支払いを求める訴えを提起したところ、Bは賃貸借関係の存在を争った。このような主張は認められるか。


 前述したように、既判力は判決の主文にのみ及ぶが、被告が訴訟上、主張した相殺(相殺の抗弁)についての判断については既判力が生じる(第114条第2項)。


(3) 時的限界(既判力の基準時)

 既判力は、審理の終結時、すなわち、口頭弁論終結時における権利・法律関係の存否を確定する。 最終口頭弁論の終結前に発生していた事実を理由に挙げ、判決で確定された権利・義務関係を争うことはもはや許されない。例えば、被告の代金支払義務を認める判決が下され、それが確定すれば、被告は、口頭弁論が終結する前にすでに弁済していたことや、売買契約の無効、不存在、原告の請求権の時効消滅といった、口頭弁論終結時にすでに存在していた事実を主張しても認められない。これに対し、口頭弁論終結後に生じたことであれば、主張し、自らの請求を基礎づけることができる。



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