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ユスティティア EUの教育・青少年政策




J.  不 服 申 立 制 度


1. 意義と種類
 裁判の内容や手続、また、事実行為(執行行為や裁判所書記官の処分など)に不服がある者は、同一ないし上級裁判所等に再審理を求めることができる。これによって、@裁判の適正やA当事者の権利救済が図られるだけではなく、B上級審による法令解釈・適用の統一が可能になる。

 不服申立方法には、@ 控訴上告抗告など、原裁判の取消・変更を求める
上訴、A 特別上告 や特別抗告など、憲法違反を理由とし、最高裁判所に確定裁判の取消・変更を求める特別上訴、B確定裁判の取消・変更を求める再審、また、C 督促異議、執行異議、少額訴訟判決に対する異議、仲裁判断取消の申立てなど、その他の不服申立方法がある。


2. 上訴

2.1. 種類
 上訴には、@ 終局判決の取消・変更を求める 控訴上告 と、A 決定や命令の取消・変更を求める 抗告 があるが、以下では@について説明する(抗告についてはこちら)


2.2. 控訴

(1) 定義
 控訴とは、第1審の終局判決の取消・変更を求め、第2審(控訴審)に上訴することを指す。
 

2 高等裁判所 地方裁判所
1 地方裁判所 簡易裁判所
 


(2) 控訴の提起
 控訴は原判決の送達を受けてから2週間以内に控訴状を第1審裁判所(原裁判所)に提出して行う(第285条、第286条第1項)。訴状とは異なり、不服申し立ての範囲や控訴理由は必ず記載しなければならないわけではない。

    リストマーク 控訴状の書式


◎ 控訴の利益
 第1審で全部勝訴した者は、独立の控訴を提起しえないが(控訴の利益を欠く)、相手方によって控訴が提起されると、請求を拡張したり、新たな申立てを追加することができる。また、相手方の控訴に便乗し、相手方が控訴していない事項についても、審理を申し立てることができる(附帯控訴、第293条および最判昭和32年12月13日、民集第11巻第13号2143頁参照)。

  リストマーク 訴えの利益については こちら


(3) 控訴提起の効果
 控訴が適法に提起されると、原判決の確定が遮断され、控訴期間が経過しても原判決は確定しない(確定遮断効、第116条)。そのため、確定判決の効力である 既判力 や執行力は生じない。

 名誉毀損を理由とし、@慰謝料とA謝罪を求める訴えが提起され、両請求とも棄却されたケースにおいて、@についてのみ控訴が提起される場合であれ、Aも控訴審に移り(移審効、上訴不可分の原則)、@とAの両方の判断について原判決は確定しない。

(4) 控訴の取下げ
 控訴は、控訴審の終局判決が下されるまで取り下げることができる(第292条第1項)。取下げは被控訴人に不利益となるわけではないため、その同意は不要である(第292条第2項、なお、第261条第1項参照)。控訴が取り下げられると、控訴は遡って効力を失い、原判決が確定する。

(5) 審理
 一般に、控訴審手続には第1審手続に関する規定が適用される(第297条)。

 控訴審は第1審で収集された裁判資料を前提として審理を行うが、直接主義に基づき、第1審の口頭弁論の結果は、当事者によって改めて陳述される(弁論の更新、第296条第2項)。

 なお、控訴審手続において、当事者は、従来の主張を補充・訂正し、新しい事実や証拠を提出することができる(更新権)。もっとも、これを無制限に認めると、第1審手続が形骸化するため、裁判所は、時機に後れた攻撃防御方法の提出を却下することができる(第157条)。

(6) 終局判決
 控訴審の終局判決には、以下の3通りある。

 @ 控訴却下判決
 控訴が不適法であり、補正が不可能な場合、控訴は原審である第1審裁判所によって却下される(第287条第1項、第290条)。つまり、控訴状は原審に提出され、その適法性は原審によって審査される。
 
 A 控訴棄却判決
 控訴に理由がないときは、控訴を棄却する判決が下され、原判決が維持される(第302条第1項)。なお、原判決の理由が不当であっても、同じ結論(つまり、控訴には理由がないこと)が導かれる場合には、控訴は同様に棄却される(第2項)。 

 B 控訴認容判決
 控訴に理由があるか、または、第1審手続が法律に違背する場合には、控訴を認容し、原判決を取り消さなければならない(第305条、第306条)。この場合、控訴審が訴えについて自ら判断を下すのが原則であるが(自判)、審理を尽くさせるため、第1審裁判所に差し戻すこともできる。なお、本案の審査を十分に行うことなく、却下された原判決を取消すときは、審級の利益 を保障するため、差し戻さなければならないが(第307条、必要的差戻し)、原審が本案について十分に審理いている場合は、審級の利益を考慮する必要がないため、控訴審裁判所は、原判決を取り消して、自判することもできる(第307条但書)。他方、原審が本案判決を下しているが、さらに弁論をする必要があるときは、原審に差し戻すことができる(第308条第1項、任意的差戻し)。

(7) 原判決の取消し・変更(控訴審の審査の範囲)
 民事訴訟において、裁判所は当事者の申立てに拘束される。つまり、裁判所は当事者が申立てていない事項について判断してはならない(処分権主義、第246条)。控訴審も同様であり、同裁判所による原判決の変更は、不服申立ての範囲内に限定される(第304条)。そのため、例えば、@ 延滞賃料の支払いと A 賃貸物の返還を求める請求が併合して提起され、第1審裁判所によっていずれも棄却されたが、@ の請求についてのみ控訴が提起されるときは、控訴審の審理過程において、Aの請求を認容すべき事由が明らかになったとしても、控訴審はこれを認容してはならない(利益変更の禁止)。つまり、原判決のうち、控訴人が不服を申し立てなかった点については、不当であっても、控訴人に有利に変更することは許されない。

 また、原審が@の請求のみを認容したため、Aの請求について控訴を提起したときは、@の請求権の不存在が明らかになったとしても、控訴審は@の請求を退けてはならない(不利益変更の禁止)。つまり、原判決のうち、控訴人が不服を申し立てていない事項については、控訴人に不利に原判決を変更することは許されない。したがって、原判決に不服を申し立てない限り、当事者は事後の裁判で不利な扱いを受けることはない。ただし、例えば、Aの請求に関する原判決に対し控訴を提起したところ、相手方が@の請求について附帯控訴を提起するとき、控訴審は@の請求について審査し、控訴人に不利に原判決を変更しうる。このような場合、控訴人は控訴を取り下げることによって、不利益変更の危険を回避することができる(第293条第2項本文参照)。

 なお、裁判所が 職権で調査すべき事項 や職権ですることができる裁判やその変更(第67条第2項、第259条)については、不服申立てがあるかどうかに拘わらず、控訴審は審査することができる(正確には、審査しなければならない)。したがって、原審は一部の請求を認めたため、その部分については控訴が提起されていない場合であれ、控訴審は(同請求にかかる)職権調査事項について審査しうる(審査しなければならない)。その結果、控訴人が不服を申立てていなかった原判決の一部分が取り消されることになっても、不利益変更禁止の原則には違反しない(最判平成15年11月11日=判時1842号31頁)。

 原審の訴訟手続が法律に違反していないかどうかも職権で調査される。同手続に重大な瑕疵があったと判断されるとき、控訴審は同手続、つまり、原判決を取り消し、事件を差し戻さなければならない(第308条第2項参照)。さもなくば、控訴審の判断が上告再審の対象になる。
 
 判決の手続、つまり、評決、判決書の作成、判決の言渡しにかかる手続の法律違背も職権調査事項であるため、控訴審は、不服申立てがなくても、審査しうる(審査しなければならない)。第1審の判決手続が法律に違反すると判断されるとき、控訴審は第1審判決の内容が正当であっても、同判決を取り消さなければならないが(第306条)、事件を差し戻さず、自ら判決を下すことも認められる(例えば、第1審が当事者に判決の言渡期日を告知せず、言い渡したに過ぎない場合)。なお、第306条は「第1審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第1審判決を取り消さなければならない」と定めているが、これは判決の内容ではなく、判決の手続が法律に違背する場合について定めたものである。判決手続の法律違背に基づき、そもそも判決は有効に成立していないと考えるならば、取り消しの対象も存在しないことになる。また、判決そのものの有効性が問題になっているため、控訴人が不服を申立てなかった部分を含め、判決全体が取り消されても、不利益変更禁止の原則には違反しない。

 

2.3. 上告

(1) 定義
 上告とは、第2審(控訴審)の終局判決の取消・変更を求め、第3審(上告審)に上訴することを指す。


3 最高裁判所 高等裁判所
2 高等裁判所 地方裁判所
1 地方裁判所 簡易裁判所
 
 

 なお、高等裁判所が第3審となるケースでは、同裁判所の終局判決が憲法に違反することを理由に最高裁判所に不服申立を行うことができる。これを特別上告(または違憲上告ないし再上告)と呼ぶが、憲法第81条は最高裁を違憲審査の終審裁判所として規定しており、最高裁による違憲審査を受ける機会を保障するものである。なお、本来の上告ではないため、特別上告を提起しても、原判決の確定は遮断されないが(参照)、裁判所は申立てにより、原判決の執行の停止または取消しの仮処分を命じることができる(第398条第1項)。


(2) 上告の提起
 上告は、原判決が送達されてから、2週間以内に上告状を原裁判所(第2審)に提出して行う(第313条、第314条)。上告人は、上告理由を述べなければならない。上告状に上告理由が記載されていないときは、最高裁判所規則で定める期間内(上告提起通知書の送達を受けてから50日以内)に上告理由書を提出しなければならないが(第315条第1項)、これがなされなければ、上告は不適法として却下される(第316条、第317条参照 → 控訴の場合と比較せよ)。

(3) 上告理由
 上述したように、上告人は上告理由を述べなければならないが、同理由は以下の通りである。
 
@ 憲法解釈の誤りおよび憲法違反(第312条第1項)
 憲法解釈の誤りや憲法違反がなければ原判決の内容が異なっていたかどうかは問わない(これに対し、法令違反を理由とする上告(第3項)は、法令違反がなければ、おそらく異なった判決が下されていたであろうとの蓋然性がなければならない(後述参照))。

A 高等裁判所に対する上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反であってもよい(第3項)
  
  つまり、最高裁判所に対しては、法令違反を理由に上告しえない。ただし、原審が最高裁の判例に相反する判決を下したこと、また、法令解釈に重要な事項が含まれているときは、最高裁判所に上告を申し立てることができる(上告受理の申立て、第318条)。

 法令には、法律、公権力を行使して発せられた命令・規則、条例、条約、外国法や慣習法などが含まれる。他方、判例法は含まれない。

 なお、経験則 は法令にはあたらないが、その解釈を統一する必要性は法令と異ならないため、通説は経験則違背を理由とする上告を認める。つまり、裁判官が経験則に基づき法令を解釈・適用しているケースでは、経験則違反があると法令の解釈・適用にも誤りが生じるため、第312条第3項が定める法令違背を理由に上告を提起しうる。他方、事実認定の段階で経験則が用いられている場合、経験則違反は自由心証主義違背(第247条)、つまり、法令違背と捉えることができるため、同じく、第312条第3項に基づき上告を提起しうる。

B 原審が法律に従い構成されていなかったこと(第312条第2項第1号)
 例えば、欠格事由のある者が判決裁判所を構成していた場合(裁判所法第41条〜第46条)、任命方式の違法(憲法第80条第1項)、合議体の構成員数の違法(裁判所法第9条、第10条、第18条、第26条、第35条等)が挙げられる。
 
C 法律により判決に関与できない裁判官が判決に関与したこと(第312条第2項第2号)
 例えば、除斥・忌避されなければならない裁判官が判決に関与していたことや、破棄差戻しになった判決に関与した裁判官が判決に関与したことが挙げられる。なお、「判決に関与」するとは、判決の評議や原本作成に関わることを指し、判決の言渡しへの関与は含まれない(これは単なる法令違背にあたる)。

D 専属管轄違反(第312条第2項第3号)、代理人の代理権の欠缺(第4号(なお、追認がある場合を除く〔第312条第2項但書〕)、口頭弁論の公開規定違反(憲法第82条および裁判所法第70条違反)(第5号)、判決理由の欠缺および判決理由の齟齬(第6号〔第253条第1項第3号違反〕)
 


 上掲の@、B〜Dを理由とする上告は、それらの理由が判決の内容に影響を及ぼしたかどうかを問わず認められる。そのため、@、B〜Dの事由を絶対的上告理由と呼ぶ。これに対し、Aの事由は、それがなければ判決が異なっていたであろうとの蓋然がある場合にのみ認められ、相対的上告理由という。


(4) 審理
 上告審は、原審が適法に確定した事実に拘束され(第321条第1項)、原判決の憲法・法令違反ないし解釈の誤りについてのみ審査する。この観点から、上告審を法律審と呼ぶ。
 
 上告審は、不服申立てがあった事項についてのみ審査する(第320条)。ただし、職権調査事項については、不服申立てがなされなくとも審査しうる(第322条)。

 審理は原則として書面(上告状、上告理由書、答弁書など)で行われる。その結果、上告理由がないと判断されるときは、口頭弁論を経ないで、上告を棄却してもよい(第319条)。

(5) 終局判決
 上告審の終局判決には以下の3通りある。

  @ 上告却下判決

 上告が不適法なとき、判決で却下される。


 A 上告棄却判決

 上告に理由がないとき、棄却判決が下される。

 B 上告認容判決
 上告に理由があり、認容されると、原判決は破棄されるが、上告審は事実審理を行わないため(→ 法律審)、原則として、事件は原審に差し戻されるか(破棄差戻)、同等の裁判所に移送される。ただし、原判決で確定された事実に基づき、上告審が判決を下すことができるときは、そうしなければならない(破棄自判、第326条)。



3. 再審
3.1. 定義

 終局判決が確定すると、通常、当事者はもはや裁判のやり直しを要求しえないが、第338条第1項で定められた特別の理由があるときは、再審理や確定した判決の取消を求めることができる。これを再審の訴えとよぶ。終局判決が確定した以上、それが尊重されなければならないが、判決に重大な暇疵がある場合においてまで、確定判決の効力を維持することは正義に反し、司法への信頼性も低下させるため、認められている。

 なお、再審の訴えは確定判決についてだけでなく、確定判決と同一の効力を持つ 訴訟上の和解請求の放棄・認諾 などについても提起しうる。

3.2. 再審事由
 再審は、第338条第1項が列挙する事由(再審事由)に基づいてのみ認められる。従来、それらは制限列挙と解されてきたが、今日の通説・判例は、一定の限度で拡張・類推解釈を認める。例えば、第3号の手続保障の趣旨より、訴状の送達が適法になされなかったため、敗訴当事者が手続に関与することができなかったことも再審事由になる(最判平成4年9月10日、民集第46巻第6号553頁)。

 再審事由

@ 法律に従い判決裁判所が構成されていなかったこと(第338条第1項第1号)

A 法律により判決に関与できない裁判官が判決に関与したこと(第2号)

B 代理権の欠缺(第3号)

C 判決に関与した裁判官が事件について、その職務に関する罪を犯したこと(第4号)

D 他人の犯罪行為により自白をするに至ったこと、または他人の犯罪行為によって判決に影響を及ぼすべき攻撃防御方法の提出が妨げられたこと(第5号)

E 判決の基礎となった資料が偽造または変造されていたこと(第6号)

F 判決が証人や当事者等の虚偽の陳述に基づいていること(第7号)

G 判決の基礎となった裁判または行政処分が後に変更されたこと(第8号)

H 判決に影響を及ぼすべき重要事項に関し、裁判所が判断していないこと(第9号)

I 既判力の抵触(第10号)


 @〜Bは絶対的上告理由(第312条第1項および第3項)と同じであり、絶対的再審事由として捉えられている。つまり、これらの事由が判決の内容に影響を及ぼしていたかを問わず、再審を提起しうる。

 当事者が再審事由を指摘し、上訴している場合や、再審事由があるのを知りながら上訴審手続で主張していない場合は、再審の訴えは許されない(第338条第1項但書)。

3.3. 再審の申立て
 再審の申立ては原判決の確定後、当事者が再審事由を知った日から30日以内に、原判決を下した裁判所に提起されなければならない(第342条第1項)。この申立ては訴えの形式によらなければならない(再審の訴え)。
  
 再審原告となりうるのは、確定判決において全部または一部敗訴した当事者である(原則)。

3.4. 申立ての効果
 再審は、上訴と異なり、遮断効や移審効 を持たない。
 

 3.5. 審理
 再審の訴えは、原判決を下した裁判所の専属管轄に属する(第340条第1項)。審級の異なる裁判所が同一の事件について下した判決が対象になる場合は、上級の裁判所によって併せて審理される(第2項)。

 再審手続には、その性質に反しない限り、各審級の訴訟手続に関する規定が準用される(第341条)。

3.6. 決定・判決
 再審の訴えが不適法であれば、裁判所の決定により、却下される(第345条第1項)。
 適法であれば、再審事由が審査されるが、これが存在しないと判断されれば、訴えは、決定により棄却される(第2項)。再審事由があると判断されれば、裁判所は再審開始を決定し(第346条)、不服が申し立てられた点について、本案の審査が行われる(第348条第1項)。その結果、原判決が不当であるとされれば、裁判所は原判決を取り消し、新しい判決を下すが、原判決の結論が正当と判断されれば、再審の訴えを棄却する(第2項・第3項)。
 


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審級の利益
 審級の利益とは、当事者は第1審、第2審、第3審と各審級の訴訟手続を利用し、裁判所に慎重な判断を求めることが許される利益を指す。これを保障するため、第1審が本案について十分に審査せず、訴えを却下したが、第2審が同判決(原判決)を取消すときは、第1審に本案の審理を尽くさせるため、第1審に差し戻さなければならない(第307条本文 、詳しくは こちら)。また、控訴審で反訴が提起される場合にも、審級の利益が失われるため(第1審による審査を受けることができない)、控訴審での反訴の提起は相手方の同意を必要とする(第300条)。