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ユスティティア EUの教育・青少年政策




B.  受 訴 裁 判 所
 

6. 訴え提起の効果

 (1) 総論

 訴えが適法に提起され、裁判所が本案(訴訟物)について審査できる状態になることを訴訟係属と言う。詳しくは、訴状が被告に送達され、裁判所が本案について審査できる状況に置かれることを訴訟係属というが、これより訴訟法上の効果のみならず、実体法上の効果が生じる。

 @ 訴訟法上の効果
  ・訴訟参加(第42条、第47条、第52条)
  ・訴訟告知(第53条)
  ・重複起訴の禁止(第142条)
  ・反訴(第146条第1項)
  ・中間確認の訴え(第145条)
  ・訴えの変更(第143条)

A 実体法上の効果
  ・時効の中断(民法第147条、第149条)
  ・出訴期間その他の除斥期間の遵守(民法第201条など)
  ・善意占有者の悪意の擬制(民法第189条第2項)

 
訴訟係属の発生時については争いがあり、@ 訴状提出の時点とする説と、A被告に送達された時とする見解があるが、訴訟法上の効果に関しては、被告の裁判を受ける権利ないし防禦権の保護が重要であるから、A説が妥当である。他方、実体法上の効果については、原告の権利行使の意思が重要であるため、@説が適切である(民法第147条参照)。


訴訟係属時


 

注意

 前述したように、訴訟法上は、被告に訴状が送達された時に訴訟係属が生じると解すべきであるため、XがYに賃料の支払いを求める訴えを同時に複数の裁判所に提起したとしても、訴状がYに送られるまでは、複数の裁判所に事件が係属していることにはならない。


 訴訟係属
は、判決の確定、和解調書の作成、請求の放棄もしくは認諾調書の作成、訴えの取り下げなどによって消滅する。


(2) 各論 〜 重複起訴の禁止(第142条)

@ 意義

 すでに裁判所に係属している事件について、新たに訴えを提起し、別途争うとすれば、以下のような問題が生じる。

a. 訴訟経済(訴訟に関する裁判所、当事者、およびその他の関係人の労力・出費をできるだけ少なくするという訴訟制度上の要請)に反する。

b. 重複して応訴しなければならない被告に不公平である。

c. 複数の裁判所が内容の矛盾する判決を言い渡すことがある。


 それゆえ、民訴法第142条は、重複して訴えることを禁止している。具体的には、後訴が不適法として却下される。 
 


A 要件 〜 事件の同一性 〜

 事件が同一かどうかは
当事者および審理対象の観点から判断される。


a. 当事者

  前訴と後訴の原告と被告が同一である場合だけではなく、立場が逆である場合も事件は同一とみなされる。


(例)

損害賠償の支払いを求める前訴の被告が、後訴を提起し、支払義務の不存在(債務不存在)の確認を求める場合(参照


二重起訴


  また、前訴の判決効の拡張を受ける者が後訴の当事者である場合も、同一の事件として扱われる。


(例)

AがBに代わり、Cに代金の支払いを求める訴訟を提起した後、BもCに対し訴えを提起する場合(債権者代位訴訟中に債務者が訴えを提起し、同一債権の給付を求める場合〔民法第423条参照〕)


債権者代位

  〔前訴〕 AからCへ提訴(Bの債権を主張)

  〔後訴〕 BからCへ提訴(Bの債権を主張)


b. 審理対象

 前訴と後訴の 訴訟物 が同一であれば、事件は同一としてみなされる。同一の権利・義務に関する給付の訴えと消極的確認の訴えは、訴訟物が同じであると扱われる。

(例)

損害賠償の支払いを求める前訴の被告が、後訴を提起し、支払義務の不存在(債務不存在)の確認を求める場合(参照


二重起訴


 訴訟物が異なっている場合であれ、請求の基礎が同一であったり、主要な争点が共通なときは、同一の事件として扱うべきとする見解が有力である。例えば、@土地所有権の確認を求める訴えと、A所有権に基づく土地の明渡請求の訴えは、訴訟物が同一であるとし、後訴は禁止される(こちらも 参照)。これは、@の訴えを提起した後、原告は訴えをAに変更することも可能であることなどを考慮するものであるが、両訴は同一事件にあたらないとする判例もある(大判昭和7・9・22、民集第11巻1989頁、東京高判昭和37・6・15、東高民時報第13巻第6号87頁)。

二重起訴



※ 相殺の抗弁

 XがYに賃料の支払いを求めて提訴したところ、Yは、自分がXに対して持っている貸金債権でもって相殺すると主張した(相殺の抗弁)。このケースにおいて、Yの貸金債権は訴訟物には当たらないが、Yの抗弁に関する裁判所の判断には既判力が生じる(第114条第2項)。そのため、判例は、相殺の抗弁に供されている自働債権(前掲のケースではYの貸金債権)を別訴で訴求することや、すでに別訴の訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟で相殺の抗弁を主張することを禁止している(リストマーク 抗弁について)。


相殺 

B 効果
 後訴は却下される。これを看過してなされた判決に対しては上訴することができる。また、矛盾する判決が下された場合は、後に確定した判決が再審で取り消される(第338条第1項第10号)。



リストマーク 図解

リストマーク 国際訴訟競合



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