その他、マーストリヒト条約の発効以降、欧州議会には、委員会の不信任案を採択し、その総辞職を求める権利が与えられているが、その採択には投票数の3分の2の賛成と、かつ、それが欧州議員総数の過半数を占めることを必要とする(EC条約第201条)。そのため、欧州議会による委員会の罷免は容易ではない。また、各委員は加盟国政府の相互承認によって任命されるが、加盟国の政権政党と欧州議会の多数派が同一である場合には、委員会の不信任案が採択される可能性はほとんどない。もっとも、前述した要件が満たされず、不信任案が否決される場合であっても、議会による批判は委員会の命運を左右しうるため、議会はEC条約上の権利の他に、実質的な統制権を持っていると言える(参照)。また、この不信任決議権には、委員会の自発的な自己統制を促すといった機能もある。なお、議会による委員会批判は、EU全体(つまり、委員会だけではなく、議会自ら)の信頼を失墜させるといったマイナス面があるため、最終的に、議会は譲歩せざるをえないと事情もある(参照)。
なお、欧州議会は、指名された委員長は各委員を一括して承認するか、否認しなければならない。つまり、特定の者のみの承認を拒むことはできない(第214条第2項第3款参照)また、不信任案に関しても、特定の委員についてのみ採決を取ることはできない(第201条参照)。この点において、議会の権限は制限されているが、これによって小国または少数派に属する委員が罷免されるといった事態を回避することができる。なお、理事会は、個々の委員の罷免を求め、EC裁判所に提訴しうるが、このような権利は欧州議会には与えられていない(第216条)。
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