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ヨーロッパの経済統合


スイスと欧州(経済)統合

 1. EFTA

 2.Free Trade Agreement of 1972

 3.EEA

 4. Bilateral Agreement of 1999

 5. Bilateral Agreement of 2004 

 6.スイスのEU加盟申請



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リストマーク Free Trade Agreement of 1972

 1970年代、個々のEFTA加盟国は、EECと貿易自由化交渉を行うようになるが(参照)、スイス・EEC間には、1972年7月22日、自由貿易協定が締結された(発効は1973年元旦)。この協定は、@ 工業製品の輸出入にかかる関税、差別的な課税や数量制限を廃止し、輸出入を奨励することによって、EC・スイス内の経済活動を活性化し、生活水準や生産性を高めると共に、A 公正な競争条件の確保を目的としている(第1条)。なお、農産物は対象から除外されている(第15条)。また、サービスも対象外であるが、これらの貿易の完全な自由化は、2005年の現在にいたるまで実現されていない(参照)。


(参照) Cottier and Oesch, International Trade Relation (Stämpeli Verlag 2004), 320-324

欧州委員会の公式サイト




リストマーク スイスとEEA

 ECと個々のEFTA加盟国間の自由貿易交渉は、1970年代より進展しているが(参照)、ECの発展と共に(リストマーク 域内市場の完成)、両者間の関係も強化されるようになる。これは、ECを中心に進められるヨーロッパの経済統合から取り残されることに対し、EFTA加盟国(特に北欧諸国)が危機意識を持ったためであるが、すでにECとの間に広範な自由貿易協定を締結していたスイスは(参照)、この交渉に消極的であった。しかし、交渉への参加は義務付けられた。

 交渉の結果、ECと個々のEFTA加盟国間では、欧州経済領域(EEA) の設立条約が締結された(1992年5月2日)。スイスもこれに調印し、批准を目標に掲げていたが(なお、5月20日、スイス政府は EC への加盟を申請 する)、1992年12月6日に実施された国民投票では、僅差で批准が否決された(反対票は全体の50.3%、また、23の州の内、16州が批准を否決した)。その主な理由としては、@ EC法の総体系(Acquis communautaire” ) の受入を必要とする緊密な統合や、A 広範囲にわたる制度的協力関係にスイス国民が抵抗したためと解されている。つまり、EEA加盟はEU加盟への第一歩として捉えられ、自国の独立性ないし主権の喪失に対する懐疑論が根強く残っていたためとされている。1992年5月20日、EC(EU)加盟申請がなされていなければ、国民投票の結果は違っていたと解される。

 しかし、スイスの孤立を避け、また、国内企業の国際競争力を維持・強化する上で、ECとの経済統合はきわめて重要であることが広く理解されるようになり、EC法に則した国内法も制定されるようになった。また、スイス政府は、ECと bilateral な協定の締結に尽力するようになる(詳しくは こちら)。


(参照) Cottier and Oesch, International Trade Relation (Stämpeli Verlag 2004), 328-329

スイス・EEA間の原産地規則(diagonal cumulation) 

スイスのEC(EU)加盟申請




リストマーク EC-Swiss Bilateral Agreements of 1999 (Agreements I)

 スイスがEEAに加盟しないことより生ずる不利益を避けるため、スイス・EC間では、1994年、7つの案件(人の自由な移動、農産物貿易、公共調達、適合検査、空輸、陸上輸送・鉄道、第5次研究枠組みプログラムへのスイスの参加)に関する交渉が開始された。

 6年間にわたる交渉の末、1999年6月21日、スイスはEC(およびその加盟15ヶ国[リストマーク混合協定])と7つの協定を締結した(参照)。その批准に先立ち、2000年5月21日、スイスでは国民投票が実施されているが、約3分の2の投票者の支持を受け、諸協定は2002年6月1日に発効している。



New 2004年5月、EUには新たに10ヶ国が加盟しているが(東方拡大)、諸協定の適用範囲をこれらの国々にも拡大するに際し、スイスでは再び国民投票が実施された(2005年9月25日)。反対票が過半数を占め、新加盟国への適用が否定される場合には、1999年の諸協定を一方的に破棄するというEUの圧力を受けていたこともあり、賛成票は56%に達し、適用範囲の拡大が了承された。




 新しい協定は、EC裁判所の判例法を含めた EC法の総体系(Acquis communautaire” ) の受入をスイスに求めている。また、段階的に労働市場を自由化し、また、国境を越えたサービス提供(年間90日まで)を認める点で、従来の自由貿易協定 よりも、経済統合を進展させている。

 なお、スイス・リヒテンシュタイン間には関税同盟が設立されているため、上述したスイス・EC間の協定は、リヒテンシュタインにも適用される。




(参照) 欧州委員会の公式サイト 

スイス・EC間の原産地規則(bilateral cumulation)





リストマーク EC-Swiss Bilateral Agreements of 2004 (Agreements II)

 1999年の協定締結後、ECとスイスは、さらなる統合について協議することになったが、その焦点は以下の通りである。

 まず、EC側は、@ 貯金に対する国際課税と、A 間接税に関する詐欺撲滅協力制度の強化(特に、タバコの密輸防止対策)をスイス側に求めている。

 他方、スイスは、@ シェンゲン・ダブリン制度への参加や、A 1999年の協定では先送りされた7項目(加工農産品、統計、環境、メディア、教育、年金、サービス)に関する協議を提案した。


 2004年5月、両者は、サービス市場の更なる自由化を除く、上掲の全ての点で合意に達し、同年6月25日には8つの協定が締結されている。なお、サービス市場の自由化については、協議を継続することになっている。

 8つの協定の内の7つ(統計、年金、環境、メディア、詐欺対策、貯金に対する課税、シェンゲン・ダブリン)の批准に先立ち、スイスでは国民投票の実施が検討されているが(スイス憲法第141条参照)、少なくとも、シェンゲン・ダブリン制度への加盟については実施が確実視されている。



New

 2005年6月5日、シェンゲン・ダブリン制度への参加の是非を問う国民投票が実施された。賛成票は55%に達し、同制度への参加が決定された。






1999年の協定

2004年の協定
(未発効)

 人の自由な移動
 農産物
 公共調達
 適合検査
 空輸
 陸上輸送・鉄道
 第5次研究枠組みプログラム

 加工農産品
 
統計
 年金
 環境
 メディア
 詐欺対策
 貯金に対する課税
 シェンゲン・ダブリン



(参照) Cottier and Oesch, International Trade Relation (Stämpeli Verlag 2004), 338-339






Link

欧州委員会の公式サイト

 ・ スイスとEUの関係

 ・ EC・スイス自由貿易協定





EFTA加盟国(スイスを含む)と第3国間の自由貿易協定
(EZVの公式サイト)

swiss




(2005年5月15日 作成  11月3日 更新)