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ヨーロッパの経済統合


原産地規則(Rules of Origin)

5. Preferential Rules and Cumulation



(1) 特恵的関係における原産地規則の意義と種類

 自由貿易地域 ないし複数の国の間で特恵関係を形成し、当事国の物品の輸出入のみを優遇する場合には、物品の原産地の決定が非常に重要である。

 ある物品が一つの国で作り出されるときは、原産地国は自ずと確定されるが、複数の国で生産されるときは、原産地を決定する必要がある。この点について、以下の規準を設けられている。


@ Bilateral cumulation

 2つの加盟国間で、互いの産品を自国産として認証しあう制度

 例えば、一方の加盟国(A国)を原産地とする物品が他の加盟国(B国)に輸出され、そこで加工され、新しい製品が完成するとき、その製品はB国産と扱われる。



モデル

 他方、第3国からA国に輸入された物品がA国産と認証されない場合は、B国に輸出され、加工されたとしても、B国産としてみなされるとは限らない。

通常、2国間の協定(例えば、EC・スイス間の自由貿易協定)は、bilateral cumulation を採用している(参照)。






モデル

A Diagonal cumulation

 上掲の bilateral cumulation が3つ以上の国の間において適用される場合


 例えば、A国、B国、C国は互いに自由貿易協定を締結し、かつ、同一の原産地規則を有するケースにおいて、B国を原産地とする物品やC国を原産地とする物品がA国に輸送され、そこで組み立てられた製品(完成品)はA国産として認定される。

モデル


 他方、A国・B国間に相互認証制度が存在しないときは、B国産はA国産として扱われず、それとC国産を組み合わせて完成させた製品もA国産として認定されるとは限らない。


EC・EFTA加盟国間や、ECとその他の欧州諸国間における自由貿易協定は、diagonal cumulation を採用している(pan-european cumulation)(参照)。




B Full cumulation

 域外から輸入され、本来であれば、域内産として認定されない物品を用いた製品であれ、域内における全ての加工過程を考慮すれば、域内産として認定しうるとする制度



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 EC内やEEA内ではこの累積規準が採用されている。つまり、ECやEEAは単一の領域としてみなされ、域内における全工程が考慮される。



(2) スイスとEC、EEA、EFTAの関係

 スイス・EC間で締結された自由貿易協定(1972年)の第3議定書は原産地規則について定めているが、EEA協定の発効後、修正されている(Decision No. 1/96 of the EC-Switzerland Joint Committee of 19 December 1996, OJ 1997, No. L 195, 1)。新第3条は、スイス・EC間では、bilateral cumulation が適用されると定める。

リストマーク

スイス・EC間の自由貿易協定第3議定書 (EZVの公式サイト)[ドイツ語]



 他方、スイス・EEA間では、diagonal cumulation (pan-european cumulation)が適用される(前掲決定第4条)(参照)。なお、前述したとおり、EEA内では full cumulation によるが、スイスはEEAに加盟していないため(参照)、full cumulation の恩恵に与ることができない。他方、EEAからスイスへの輸出については、full cumulation による(EEA内では full cumulation が適用されるため)。

 EFTA条約の議定書Bは、原産地規則について定めているが、EEA協定の発効後、これも同様に改正されている。


 



(参照) A User's Handbook to the Rules of Preferential Origin used in trade between the European Community and other European countries

欧州委員会の公式サイト

Cottier and Oesch, International Trade Relation (Stämpeli Verlag 2004), 628-631





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(2005年5月16日 記)