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リスボン条約
〜 リスボン条約 〜


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ドイツ議会、批准に必要な国内法を整備

ドイツ国旗 リスボン条約の批准に際し、ドイツは国民投票を実施せず、国会(両院)の審議に委ねているが、連邦議会(Bundestag)は2008年4月に(詳しくは こちら)、また、連邦参議院(Budesrat)は同年5月(詳しくは こちら)に批准を了承し、批准に必要な以下の国内法を整備した。

@ リスボン条約の批准にかかる法律

A リスボン条約の批准に伴うドイツ基本法(憲法)の改正にかかる法律

B

EUの政策に関する連邦議会と連邦参議院の権利拡充・強化にかかる法律



 これを受け、連邦大統領は、2008年10月8日、批准書に署名したが、批准の合憲性を争う6件の訴えがドイツ連邦憲法裁判所に提起されたため、同裁判所が判断を下すまで、批准書をイタリア政府に寄託することは延期された。

 2009年6月30日、連邦憲法裁判所は、前掲の三つの国内法の内、BのEUの政策に関するドイツ国内議会の権利拡充・強化に関する法律のみ憲法に違反するとし、残る二つの国内法は、憲法裁判所の解釈に従うならば、合憲とする判決を下した。また、以下のように述べ、国内法の整備を議会両院に要請した(詳しくは こちら)。

 

EUの機能に関する条約第83条第1項は、国境を越えた重大犯罪に関する指令を制定する権限を理事会と欧州議会に与えている。同項第3款は、「犯罪の発展に応じ」、その他の(重大な国際)犯罪をも含ませることができる旨を定めるが、これはEUの権限の拡大にあたるため、基本法第23条第1項第2文が定める国内法の制定を必要とする。

リスボン条約は、欧州理事会やEU理事会が条約の改正手続を経ずに、つまり、国内議会の批准承認手続を必要とせずに、改正することを認めているが(理事会の議決方式について、全会一致から特定多数決への移行〔リスボン条約発効後のEU条約第48条第7項〕)、この点に関し、前掲の国内法は議会に充分な権利を与えておらず、ドイツ基本法第38条第1項や第23条第1項に合致しない。つまり、現在の条文でも、確かに議会には条約改正を阻止する権限が与えられているが、議会が見解を表明しない場合には、同意するものとして扱っており、これはドイツ憲法に反するとされる。



 この判決に従い、連邦議会は、2009年9月8日、上掲Bの法律を改めることを決定した(参照@A)。また、同法第1条に基づき、以下の法律が新たに制定される。


EUの政策に関する連邦議会と連邦参議院の責任〔EU統合に関する責任〕の実施にかかる法律(IntVG)



 連邦議会は、さらに以下の法律の制定を決定した(参照)。


リスボン条約の批准にかかる基本法改正の実施にかかる法律(参照@A

EUの政策に関する連邦政府と連邦議会の協力に関する法律(EUZBBG)の改正にかかる法律(参照@A

EUの政策に関する連邦と州の強力に関する法律(EUZBLG)の改正にかかる法律(参照@ABC


 上掲の法令は連立与党(CDU/CSUおよびSPD)だけではく、緑の党やFDPによって支持された。また、連邦憲法裁判所に提訴していた与党CSUの Gauweiler 議員も法案の採択に賛成した。他方、反対票を投じたのは旧東ドイツ共産党の流れをくむ Die Linke のみであったが(参照)、同党はリスボン条約の批准そのものに反対していた(参照)。また、独自の法案を提出していたが、否決された。



賛成票   446
反対票   46
 
(すべて Die Linke 所属議員)
棄 権  2
 
(SPD 1、FDP 1)
欠 席  49
無効票   0


 また、連邦参議院も、9月18日、全会一致にて法案を採択した(参照@A)。

 2009年6月30日に下された連邦憲法裁判所判決を受け開始された一連の立法作業は、アイルランドの国民投票(10月2日)までに終了させることが目標とされていたため、夏休みを期間を含め、約2ヶ月間の内に異例の急ピッチで行われた。いずれの法律も、議会の権限を強化するものであるため、特に大きな反対もなく制定されたが、野党 Die Linke はリスボン条約の批准そのものに反対していた。また、与党CSUは、@EUの権限踰越に関する連邦と州の提訴権(ドイツ連邦憲法裁判所に対する訴え)の拡充と、Aドイツ国内においてリスボン条約は、連邦憲法裁判所の判決に合致する範囲でのみ適用されることの明文化を要請していたが(参照)、短期間の内に法案を通すといった要請もあり、妥協した(参照)。なお、採択された法律は、いずれも連邦憲法裁判所判決の要請に合致していると解される(参照)。


 

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(参照)

ドイツ連邦憲法裁判所判決の要点 

EUや他の加盟国に与える影響

 

ドイツ連邦憲法裁判所の判決(BVerfG, 2 BvE 2/08 vom 30.6.2009

一連の新しい国内法の評価


 


リストマーク リスボン条約の批准 

リストマーク 欧州憲法条約


(2009年 9月 19日 記)