Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ


  EU & Western Balkan Countries


リストマーク コソボの独立宣言に対するEUの態度 リストマーク

 2008年2月17日、コソボ議会は、セルビア共和国からの独立を宣言した。これを受け、EU理事会(EU加盟27ヶ国の外相会議)は、翌18日、ブリュッセルで会合を開き、新国家の承認について共通の方針を採択したが、コソボを独立国家として承認するかどうかの判断は、個々の加盟国に委ねることにした。これは、第57番目の欧州国家の承認は国内の民族問題に影響を及ぼしかねないとする一部の加盟国(スペイン、ギリシャ、ルーマニア、キプロスなど)の懸念を配慮したものである(EU内の民族問題)。特に、スペインは、バスク地方やカタロニア地方の独立に飛び火しかねないため、コソボの独立を断固として拒否しているが、そもそも、EU・ECには新国家を承認する権限は与えられていないため、法的に、コソボを承認することはできない。なお、18日のEU理事会決議には、EUがコソボの独立を支援するにせよ、民族に自決権を与える先例となるものではないとする文言が盛り込まれたが、これはスペインの要請に応えたものである。

 



リストマーク EUによるコソボ独立支援の必要性 リストマーク

 上述したように、コソボを承認するか否かに関し、EU加盟27ヶ国は見解を統一していないが、独立を支援するということは、すでに2007年12月の時点で決まっており(2007年12月の欧州理事会決定)、後述する人的・財政的援助計画が実施される予定である。この点に関し、欧州委員会の Rehn 委員(EU拡大担当)は、EUの支援は、もっぱら西バルカン半島の安定化を目的としており、民族の独立を奨励するものではないと述べている。実際に、EUの支援がなければ、人口わずか200万の新国家の運営は厳しく、バルカン半島西部の情勢を不安定にすると解されるが、多くのEU加盟国がこの地域に隣接するだけに、その安定化はEUにとっても非常に重要である。このことは、独立を容認しないスペイン、ギリシャ、ルーマニアであれ、コソボに駐留する NATO軍に自国民を派遣していることからも読み取れる。

 なお、当初は、独立支援の実施についても見解が対立し、リスボン条約の締結で団結した27ヶ国に新たな課題を突きつけたが、翌日の首脳会談において、全会一致で支援実施を決めたのは、コソボの独立が不可避的となった現実を全加盟国が受け入れたためと解される。





E U の 支 援 策


 2007年12月の欧州理事会において、EU加盟国は、コソボの独立支援策を全会一致で決定した(参照)。EUの支援策は、従来の国連の活動(UNMIK)を継承するものであるが、新国家における法の支配の確立を目標としている。具体的な内容は下記の通りであるが、EU史上、最大規模の第3国支援となる(参照)。


リストマーク 財政支援

 むこう4年間にわたり、EUは、約10億ユーロの投資を行う。また、晩春ないし初夏(いずれにせよ、夏休み前)には、財政支援会議を開催する予定である。それまでに実際に援助が必要とされる事項を見極めるものされているが、現在、EUは、建物や橋の建設ではなく、諸制度の構築を重視すべきと考えている。



リストマーク 人的支援

 総勢1800人の警察官、裁判官、検察官、税務官、刑務官、行政官・専門家が派遣される。EULEX と名付けられたこの組織は、フランス人の Yves de Kermabon を長とし、主に、ドイツとイタリアの官吏で構成される(マルタを除く全加盟国より派遣される予定である)。また、最初の16ヶ月間の予算として、2億500万ユーロが計上されている。

 コソボが独立宣言前夜の2008年2月15日、EU加盟国は、EULEX の活動開始を決定しているが、国連ミッション(UNMIK)の承継時期やその他の詳細なプランは未定である(参照)。

 なお、オランダ人外交官の Pieter Feith 氏がEUの新しいコソボ特命大使に任命されている。同人は、EU外交安全保障政策の上級代表 を補佐し、EU加盟27ヶ国の外交政策を代表する役目を負う。


(参照) EULEX について(EU理事会の公式サイト)





(参照)

ドイツ外務省の公式サイト(Kosovo: Deutschland und Mehrzahl der EU-Partner werden anerkennen

EU理事会の公式サイト(The EU and Kosovo)


EUの対セルビア政策


EU内の民族問題



(2007年2月18日 記  2008年3月5日 更新)


「EUと西バルカン半島諸国」のトップページに戻る