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E  U 内 の 民 族 問 題

 

 2008年2月17日、コソボはセルビアからの独立を宣言した(参照)。その背景には、アルバニア人(イスラム教)とセルビア人(セルビア正教)の長年にわたる対立があるが、EU加盟国の中には、同様の民族問題を抱える国が存在するため、新国家の独立ないし民族自決に対し、EUは慎重な態度を取っている。

 特に、バスク地方やカタロニア地方で独立の気運が強いスペインは、コソボの承認を断固として拒否している。バスク地方の Ibarretxe 首相は、2008年10月に独立の是非を問う住民投票の実施を予定している。なお、スペインの要請に基づき、2008年2月18日のEU理事会決議には、EUがコソボの独立を支援するとしても、民族の自決権を承認するものではないと文言が盛り込まれた


 ルーマニアとスロバキアでは、ハンガリー系の少数民族が居住しており、両国からの独立運動も起きている。


 キプロス島には、ギリシャ系の南キプロス(2004年5月、EU加盟)とトルコ系の北キプロスが存在するが、後者を独立国家として承認しているのはトルコのみである。かねてより、両キプロスの平和的解決の試みもなされているが(参照)、コソボの独立は、北キプロスの独立を促しかねないとし、南キプロスは警戒している。なお、ギリシャとセルビアの友好関係も影を落としている。

 

 2007年5月、スコットランドでは、イギリスからの独立を支持する SNP が政権に就いているが、同党の Alex Salmond 党首は、次期選挙が行われる2011年までに独立の是非を問う住民投票の実施を計画しているもっとも、イギリス政府からの財政支援が強化されたこともあり、独立を支持するスコットランド住民は減っており、上掲のEU加盟国ほど、深刻な問題は生じていない。

 

 オランダ系、フランス系およびドイツ系の民族が共存するベルギーでも独立について議論されることがあるが、近時は、裕福なフランドル地方(オランダ系)と、失業問題も深刻なワロン地方(フランス系)の確執が顕著になり、前者で独立を求める声も増えている。


 

 


(参照)

FAZ v. 19. Februar 2008 (Das Kosovo als Präzedenzfall?)

Die Presse v. 20. Februar 2008 (Das Ziel der Separatisten: Eine EU der 61)

 



(2007年3月14日 記)