EU加盟に先立ち、トルコは、EU法の総体系(acquis
communautaire) を受け入れなければならない。トルコの国内法がどの程度、EU法に合致しているかどうかを調査するスクリーン作業は、すでに「学術・研究」や「教育・文化」の分野において開始されているが(詳しくは
こちら)、前者の作業はすでに終了している。そのため、2006年6月12日、EU加盟25ヶ国とトルコの外相はルクセンブルクで会合を開き、
本格的に協議することを予定していた。なお、「学術・研究」に関するEU・ECの法令は少なく、トルコの国内法とも大きな隔たりはないため、トルコによる受け入れは比較的容易とされている。そのため、「学術・研究」に関しては、6月12日のうちに交渉を終了することができるであろうとみられていた(参照)。
もっとも、会議を前にし、キプロスは、トルコとの交渉をボイコットする構えを見せ、波紋を広げていた。これは、2005年7月に締結された議定書(いわゆる、アンカラ議定書)に基づき、トルコはキプロスを含めたすべてのEU加盟国と関税同盟を設立しなければならないが、従来どおり、トルコはキプロスを独立国家として承認せず、同議定書の履行も怠っているからである(参照@、A、B)。
キプロスの主張に対し、トルコの Gül外相は、会議が開かれないのであれば、ルクセンブルクには行かないと抵抗していた。また、トルコ系キプロス(北キプロス)に対する制限が撤廃されるのであれば、状況は容易に改善されるであろうと反論している(参照)。
なお、加盟交渉の段階で、トルコはキプロスを承認し、関税同盟を適切に実施しなければならないとするキプロスの要請は他のEU加盟国の支持を得られなかったため、当初の会議開催予定時刻の直前になって、キプロスは妥協した。そのため、予定通り、6月12日に会議が開かれているが、もっとも、キプロスの要請を受け、EU加盟国は、2006年末までに、トルコは、いわゆる
アンカラ議定書 を誠実に履行し、キプロス船籍の寄航や航空機の離発着を認めなければならないことを訴えている。
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