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EUの司法・内務政策 − 「自由、安全および正義の空間」

〜 リスボン条約体制の概要 〜

   
 1. 「自由、安全および正義の空間」
 2. 国境検査、庇護および移民に関する政策
 3. 民事に関する司法協力 
 4. 刑事に関する司法協力
 5. 警察協力 
6. EU裁判所の管轄権


 

1.自由、安全および正義の空間
 EU条約第3条第2項 は、EUの目標として、人の移動の自由が保障された「自由、安全および正義の空間」を市民に提供することを挙げる。「自由、安全および正義の空間」は、新しいEUの司法・内務政策の名称にもなっているが(つまり、EUの機能に関する条約第3部第5編のタイトルとなっている)、その内容は明確に定義されているわけではない。これは同政策が比較的新しく、今後の発展に柔軟に対応しうるようにするためでもあるが、個々の条約規定(特に、EUの機能に関する条約第67条)に照らすと、以下のように捉えることができる。



自由

 EUは域境を撤廃し、市民が自由に移動しうる空間を設けなければならない。また、その手段として、域境(特に加盟国間の国境)における検査を全ての者に対し撤廃する(第67条第2項、第77条第1項第a号)。

 

安全

 域境検査の撤廃によって治安・安全が脅かされてはならない。そのため、EUは犯罪、人種差別や外国人排斥を予防・撲滅し、また、国内の警察・刑罰執行機関の協力を調整する(第67条第3項)。なお、リスボン条約によって、加盟国の刑事法(実体法)を調整する権限がEUに与えられた(第83条)。また、刑事に関する国内裁判の相互承認を容易にするため指令を制定する権限も与えられた(第82条)(参照)。

 

正義

 市民が自由に移動しうる空間においては、基本権や、加盟国の法秩序・法の伝統が尊重されなければならない(第67条第1項)。そのため、EUも前掲の諸権限を行使するに際し、これらに違反してはならない。さらに、EUは正義へのアクセスを容易にし、民事裁判等の相互承認制度を発展させる(第67条第4項、第81条)。



 
リストマーク EC条約における「自由、安全および正義の空間」



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刑事に関する警察・司法協力