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EUの司法・内務政策 − 「自由、安全および正義の空間」

〜 リスボン条約体制の概要 〜

   
 1. 「自由、安全および正義の空間」
 2. 国境検査、庇護および移民に関する政策
 3. 民事に関する司法協力 
 4. 刑事に関する司法協力
 5. 警察協力 
 6. EU裁判所の管轄権


 

5. 警察協力

(1) 政策一般

 これまで、加盟国間の警察協力は、EU条約(EC条約ではない)第30条で定められていたが、リスボン条約によって政策の対象は拡大されない。ただし、第2次法の制定手続は以下のように改められる。

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 以下の案件に関する第2次法は、欧州議会と理事会が通常の立法手続に従い制定する(EUの機能に関する条約第87条第2項)。

(a)

情報の収集、保存、分析、交換

(b)

人材の教育・再教育支援、人材交換、設備や犯罪研究に関する協力

(c)

組織犯罪の重大な形態発見に関する捜査技術

 


A

 加盟国の関係組織間の実務協力については、理事会が特別の立法手続に従い、全会一致で第2次法を制定する。なお、理事会は欧州議会の見解を聴かなければならない(第87条第3項第1款)。理事会が全会一致で決定しえない場合、少なくとも9の加盟国からなるグループは欧州理事会に審議を求めることができる。欧州理事会は、その総意に基づき、第2次法案を理事会に差し戻すことができるが(第2款)、その総意が成立しないときは、少なくとも9ヶ国間で、第2次法案を基礎とする緊密な協力を実施することができる(第3款)。



(2) Europol

 従来、Europol には独自の捜査権は与えられていなかったが、リスボン条約はこの権限を認める(EUの機能に関する条約第88条第2項第1款第b号、第3項参照)。ただし、その捜査の影響が及ぶ加盟国(または同国の行政機関)と共に、または合意した上で実施しなければならない(第3項)。なお、Europolの活動や、欧州議会による統制(この統制には国内議会も参加する)については、欧州議会と理事会が通常の立法手続に従い規則を制定し、定める(第2項)。

 Europolの活動に対する権利保護について、リスボン条約も特に定めていないが、EU裁判所の法令審査権はEUの offices や agencies の法的効力を伴う措置にも及ぶことが明確にされた(EUの機能に関する条約第263条第1項第2文)。それゆえ、Europol の措置で、第3者に対し法的効力を発するものの適法性はEU裁判所によって審査されると解される
。なお、Europol 協定第41条は Europol 職員の免責について定めているが、これは加盟国の裁判権に服さないことを規定したものであり、EU裁判所の審査には関係しない 。

    リストマーク Europol については こちら 

 

 Link: 欧州委員会の公式ホームページ  [英語 仏語 独語
刑事に関する警察・司法協力