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星

 
E   C  法 の 執 行
  


1.加 盟 国 に よ る 執 行 (間接的執行)


(1) 加盟国による執行(間接的執行)

 EC法の執行について、EC条約は特段の定めを置いていないが、ECは、条約で列記された権限のみを行使しうるため(個別的授権の原則)、EC法は、原則として、加盟国によって執行される(Joined Cases 205-215/82, Milchkontor [1983] ECR 2633, para. 17)。ECの諸機関によって執行される特殊なケース(直接的執行)と対比させ、これを 間接的執行 と呼ぶ。

 例えば、ECは第2次法を制定し、第3国からの輸入 品に関税を課したり、農家に補助金を支給することができるが、その実施(関税の徴収や補助金の給付)は、加盟国の役割である(参照)。



関税


 EC条約第10条に基づき、加盟国は、EC法を適切に執行することが義務付けられているが(参照)、国内のどの機関が、どのように執行するかについては、各国が自由に判断しうる。もっとも、EC法が実効的に適用されるよう配慮しなければならない。その一環として、例えば、国内法を制定したり、行政機関を新たに設置することなどが必要になる。

 さらに、各国はEC法が全加盟国で統一的に適用されるように留意しなければならない。また、その他のEC法や 法の一般原則 の遵守が要求される。加盟国によるEC法の執行に異議を有する者は、EC裁判所(第1審裁判所)ではなく、国内裁判所に直接、提訴しうる(もっとも、通常は、その前に、EC法を執行する国内の行政機関に異議を申し立てることになる)。


苦情申立て



2. E C に よ る 執 行 (直接的執行)


 前述したように、EC法は、原則として、加盟国によって執行され、ECの諸機関が直接、執行するケースは例外的である。このような例は、競争政策(EC条約第83条、第85条、第88条)、財政制度(第274条)、社会政策(第144条)の分野で見られるが、EU理事会や欧州議会が制定する第2次法の中で、欧州委員会に執行権限が与えられることも少なくない(例えば、ダンピング防止政策)。EC法を執行すため、新たな機関や行政手続(コミトロギー手続)が設けられることもある。




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