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EUの教育・青少年政策

1. はじめに

 EC設立当初、ECには教育(職業訓練を除く一般教育)・青少年に関する一般的な政策権限は与えられていなかった。しかし、1976年以降、ECと加盟国は、EU理事会の場を活用し、政策を実施している。その根拠規定がEC条約内に挿入されたのは、アムステルダム条約 の発効後(1999年5月)のことである(EC条約第149条、なお、第3条第1項第q号も参照されたい)。

 なお、職業訓練 や文化政策に関する規定は、1993年11月発効の マーストリヒト条約 に基づき、いち早く導入されている(それぞれ、EC条約第150条、第151条)。職業訓練とは異なり、教育は、初等教育を初めとする種々の学校教育を指し、大学教育や生涯教育を含んでいる。なお、教育・青少年政策に関する規定(第149条)が設けられる以前、EC裁判所は、大学教育を職業訓練として位置づけていた。


2. ECの課題

 ECの教育・青少年政策の目標は、加盟国と協力して、質の高い教育制度を確立することにある。その実現に必要な場合、ECは、教育・青少年政策に関する加盟国間の協力を奨励し、加盟国の活動を支援・補充するものとされている。なお、教育内容や教育制度の構築に関する権限は加盟国の下に完全に残っており、この加盟国の権限や文化・言語の多様性をECは厳格に尊重しなければならない(第149条第1項)。
 

3. ECの政策・活動範囲

 上述したことからも分かるように、ECの権限は限定されているが、その活動も以下の事項に限定されている(第149条第2項、第3項)。

a)

教育制度のヨーロッパ規模での発展(特に、加盟国の言語の習得や普及)

b)

教員および生徒の移動(留学)の奨励

 そのために、学位や大学教育期間の相互承認制度を設けている。

c)

教育機関間の協力の奨励

d)

加盟国の教育問題に関する情報交換制度の確立

e)

青少年や社会・教育指導者の交流の奨励

f)

通信教育発展の奨励

g)

教育分野における第3国ないし交際機関(特に欧州評議会)との協力制度の奨励(第149条第3項)


4. EU理事会の権限

 上掲の政策を実施するため、EU理事会は以下の措置を発することができる(第149条第4項)。


a)

加盟国間の協力体制を強化し、または、加盟国の政策を支援・補充するための措置の発動

ECのプログラムや、個々ないし複数の加盟国の政策の財政支援

これらの措置は、欧州議会と共同で制定される(共同決定手続)。

b)

加盟国への勧告

これは欧州委員会の提案を受け、特定多数決 にて採択される。



5. 具体的なプログラム

 前述したように、EC条約内に根拠規定が設けられる以前から、加盟国はEU理事会の場において協力体制を築いており、特に、ERASUMUS、LINGUA、SOKRATES などの交換留学制度は多くの者によって利用されている。




(参照)

欧州委員会の公式サイト

欧州憲法条約内の規定



(2007年 2月 27日 記)