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EUの司法・内務政策 − 「自由、安全および正義の空間」
〜 リスボン条約体制の概要 〜


移民政策
 

 これまで、移民政策は、庇護・難民政策とともに、EC条約第63条で定められいたが、EUの機能に関する条約は、それぞれ別個の規定を設けている(移民政策は第79条、庇護・難民政策 は第78条)。既存の規定に基づき、ECは政策を実施してきたが、リスボン条約はそれをさらに発展させるため、新たな規定を設けている。その概要は以下の通りである。

1. 目標

 EUの機能に関する条約第79条第1項は、EUの移民政策の目標について明記しているが、それらは以下のとおりである。


(a)

移民流入の実効的な管理

(b)

加盟国内に適法に滞在する第3国の国民の適切な処遇

(c)

違法移民や人身取引の防止および対策の強化



2. 権限

 上掲の目標を達成するため、理事会と議会は通常の立法手続に従い、以下の分野において措置を発することができる(第79条第2項)。


(a)

 

入国・滞在条件、長期間滞在のために加盟国が発給するビザや滞在資格に関する規定(家族が共同で生活するために関する規定を含む)

(b)

 

加盟国内に適法に滞在する第3国の国民の権利の決定(同人が他の加盟国へ自由に移動し、滞在しうる条件を含む)

(c)

違法な移民・滞在(加盟国内に違法に滞在する者の送還を含む)

(d)

 

人身取引、特に、女性や子供の取引の撲滅

 なお、(c) と (d) は新たにEUに与えられた権限である(EC条約第63条第3項〜第4項参照)。

 また、EUは、加盟国への入国またはその領域内に滞在するための要件を満たさない第3国の国民の送還について、第3国と協定を締結する権限を有する(第79条第3項)。

 さらに、理事会と議会には、加盟国内に適法に滞在する第3国の国民の統合を促進・支援するための措置を発する権限が与えられている(手続は通常の立法手続による)。ただし、加盟国の国内法を調整することは明文で禁止されている(第79条第4項)。

 他方、労働者ないし自営業者として加盟国内に入ることが許される第3国の国民の数を決定するEUの権限は明確に否認されている(第79条第5項)。それゆえ、移民政策の基本的権限は従来通り、加盟国の下にある。また、第4条第2項において、EUと加盟国が権限を共有することが明記されている(参照)。



3. 加盟国間の連帯

 第3国からEU加盟国、特に、地中海沿岸諸国へ非常に多くの難民が押し寄せ、その対処は近年のEUの重要な政策課題の一つにもなっている。このような状況を踏まえ、移民を含む人の移動に関わる政策(国境検査、庇護・難民保護)に関し、全加盟国は連帯して行動し、また、責任を適切に分配することが明記された。これは財政面についても同様である(第80条第1文)。加盟国間で負担を公平に分担することは、従来のEC条約内でも、亡命者や難民の受け入れについて規定されていたが(EC条約第63条第2項第b号)、新条約は、この原則が移民政策にも適用されることを、より明確かつ詳細に定めている。


 リストマーク EUの司法・内務政策(リスボン条約体制)については こちら  


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