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ギリシャ危機と欧州中央銀行信用危機
ドイツ・フランクフルトにある欧州中央銀行前広場


ユーロ導入国によるギリシャ支援

 

 ギリシャは人口1100万の小国で、経済力もEU全体の数パーセントに過ぎないが、通貨統合が実現している現在、その財政破綻はユーロ圏全体に大きな打撃と混乱を与える。特に、フランスの金融機関はギリシャ国債を大量(約757億ユーロ )に買い付けているため、ギリシャが破産し、国債の償還が不能になれば、甚大な影響を受ける。また、財政・金融問題を抱えているのは何もギリシャだけではなく、ポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインといった、その他のユーロ導入国への危機の波及も懸念された 。そのため、ユーログループの団結した対応が求められたが、単一通貨を安定させるための支援策は早急にまとまらなかった。特に、支援が実施される場合には最大の拠出を強いられるドイツが反発した 。しかし、ギリシャが財政再建を公約し、また、IMFも支援に参加するといった独政府の要求が受け入れられたことを受け、同国も譲歩し、2010年3月25日、ユーロ導入国の首脳はギリシャ支援の実施を決定した(これは相互の借款という形態をとるが、3月の時点で額は示されなかった)。この合意に基づき、4月11日には、支援策の概要や実施方法が 、また、5月2日には、より詳細な内容がユーロ圏首脳によって取り決められた(なお、これらの合意の法的根拠は示されていない)。それによれば、ユーロ導入国とIMFの支援は3年計画で実施され、総額は1,100億ユーロとなる。その内訳は、ユーロ導入国(ギリシャを除く15ヶ国)が800億ユーロ、また、IMFが300億ユーロである。導入国間では、欧州中央銀行への拠出金の割合に従い分担されるが、最大の拠出国であるドイツを例に挙げると、初年度は約84億ユーロ、また、3年間で総額224億ユーロを負担する。なお、同国は国内金融機関である復興金融公庫(Kreditanstalt für Wideraufbau)を通じ融資する。ギリシャは年5%の利息を付け、返済しなければならないが、それが不能な場合に備え、ドイツ政府が債務を保証している。

 ところで、このギリシャ支援は、EUの措置ではなく、ユーロ導入国政府間(およびIMF)の取り決めに基づいている。これに従い、個々のユーロ導入国が支援を実施するためには、国内法の整備が必要となるが 、例えば、ドイツは、「通貨同盟内の金融安定に必要なギリシャ共和国の支払能力を維持するための保証引受に関する法律」(WFStG) を制定している。国内法の整備は国内議会によってなされるため、EU法に関し問題になることの多い民主主義原則上の要請は満たされる 。

 

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〔参照〕

ギリシャ危機と欧州中央銀行信用危機の年表

ユーロの将来

ギリシャ再建の可能性

ドイツにおける議論

ユーロの安定に関するEU法

 
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