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労 働 者 の 移 入 制 限 の 見 直 し



1. 欧州委員会の提案

 新加盟国より大量の労働者が移入し、労働市場に大きな混乱をもたらすことを防止するため、従来の加盟国は、最長7年間、労働者の流入を制限しうるが(詳しくは こちら)、東方拡大より2年が経過した2006年、この暫定措置の見直しが行われる。加盟国は、同年4月30日までに、向こう3年間の方針を欧州委員会に通達しなければならないが、それに先立ち、欧州委員会は、2月9日、制限措置の延長については慎重に判断すべきであるとの見解を示した(なお、委員会は、労働市場の自由化を勧告しているわけではない)。これは、人(労働者)の移動の自由 は、ECにおける基本的自由の一つとして保障されなければならないためであるが人の移動の自由に関して、欧州委員会の分析によると、新加盟国からの労働者の流入は、当初の予測より、小規模にとどまっている。また、規制を行っていない イギリスアイルランド、スウェーデンの3ヶ国において、新EU市民は労働需要を満たし、質の良い労働力として、経済発展に貢献しているとされる。他方、ドイツ、オーストリア など、市場を開放していない13ヶ国では、結果として、不法就労や違法滞在が増加する可能性があるとしている。



労働者の流入の制限



2. 従来の加盟国の態度

 すでに、イギリスアイルランド、スウェーデンの3ヶ国は、労働市場を開放しているが、フィンランド、デンマーク、スペイン、また、ベルギーもこれに続くと解されている(参照@A)。

   New 新たに8ヶ国、市場を開放


 他方、新加盟国の多くと隣接するドイツとオーストリアは、新EU市民の移入を2011年まで規制する方針を維持するものとみられている。特に、国内に500万の失業者を抱えるドイツ政府は(失業率はは10%を超える)、2011年まで、中東欧諸国民の受け入れを規制する方針を固めているが、ドイツやオーストリアに隣接する新加盟国(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー の Visegrad Group)は、労働市場の開放を訴えている。

 なお、新EU市民労働者の割合は、以下のようになっており、自由化を実施しているスウェーデンの割合は比較的低い(参照)。



  加盟国 新EU市民労
働者の割合(%)
 アイルランド 3.8
 オーストリア 1.4
 ドイツ 0.7
 スウェーデン 0.2



区切り線



(参照) EU加盟国の状況
 ・ オーストリア
 ・ アイルランド


New 新たに8ヶ国、市場を開放


欧州委員会の公式サイト


Der Standard v. 7. Februar 2006 (EU-Kommission: Keine Gefahr bei Wegfall der Übergangsfristen)


Die Presse v. 7. Februar 2006 (Übergangsfristen: "Wir brauchen diese Arbeitskräfte")

Die Presse v. 7. Februar 2006 (Übergangsregelung

Die Welt v. 9. Februar 2006 (EU empfiehlt Öffnung der Arbeitsmärkte)




(2006年2月10日 記)