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ユスティティア EUの教育・青少年政策




G.   終 局 判 決 に よ る 民 事 訴 訟 の 終 了


 1. 裁判の形式

 司法機関が行う法的な行為を裁判と呼ぶが(形式的な意義における裁判)、民事訴訟法上、裁判は以下の3種に分類される。
 

機 関 裁判事項・例 口 頭 弁 論 告 知 方 法 不服申立方法

判決


裁判所


訴えや上訴の当否、請求や上訴の理由の有無


原則的に必要(第87条第1項本文参照)


原則として、判決原本に基づき言い渡す(第252条)


控訴(第281条)、上告(第311条)


決定


裁判所


移送(第16条以下)
裁判官の除斥・忌避(第23条以下)


裁判所の裁量による(第87条第1項但書)


相当な方法による(第119条)


抗告(第328条)、再抗告(第330条)

即時抗告(第332条)


命令


裁判官


訴状補正・却下命令(第137条)


裁判所の裁量による


相当な方法による


抗告(第328条)、再抗告(第330条)

即時抗告(第332条)



 判決に比べ、決定と命令は簡易な形式をとり、比較的簡易な案件について発せられるが、命令は裁判官(合議体をとる場合の裁判長、受命裁判官、受託裁判官など)がその資格で行う点で決定と異なる。他方、決定は裁判所によって下される。


ポイント

 なお、文書提出命令(第223条第1項)や 訴訟手続の続行命令(第129条)は、文字通り「命令」ではなく、「決定」の形式をとるため、裁判所によって発せられる。 



リストマーク 判決書の例

 
これは給付判決の例であるが、主文は訴状における請求の趣旨に対応している(訴状の例は こちら)。

判決



2. 判決の種類
 以下では判決の種類について説明する。

2.1. 本案判決と訴訟判決
 賃金の支払いを求める訴えが提起された場合、裁判所は、原則として、口頭弁論を開いて審理し(第87条第1項本文参照)、その結果、原告の主張を認め、被告に支払いを命じる判決(請求認容判決)や、原告の主張を退ける判決(請求棄却判決)を言い渡す。このように、原告の請求の当否に関する判決を 本案判決 という。

 これに対し、訴えが訴訟要件や適法に上訴するための要件を具備していないため、不適法として却下する判決を 訴訟判決 と呼ぶ。


ポイント

 なお、訴状に不備がある場合、裁判長は原告に補正を命令するが、原告がこれに従わないとき、裁判長は、命令で訴状を却下しなければならない(第137条第1項および第2項詳しくは こちら)。これを 訴状却下命令 と呼ぶが、「命令」の形式で却下されるのは、訴えではなく訴状である。 

   

 2.2. 終局判決と中間判決
 上述した本案判決や訴訟判決のように、係属している審級の訴訟を終了させる判決を 終局判決 という。終了するのは係属している審級(原審)の裁判であり、上級審における裁判まで終結するわけではない。例えば、第1審裁判所としての地方裁判所が終局判決を下すとき、終結するのは同裁判所における裁判であり、第2審ないし第3審の裁判は終結しない。

 判決を不服とし、上級審に上訴(控訴ないし上告)が提起されるとき、判決を下した裁判所を原審と呼ぶ。
 


 

 裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときに終局判決を言い渡すが(第243条第1項)、そのような状況に至っていないときであれ、必要に応じ、中間判決 を下すことができる。中間判決は言い渡した裁判所を拘束し、また、当事者は、中間判決に接着した口頭弁論の終結前に提出できた訴訟資料を中間判決後に提出することは許されない。そのため、中間判決によって訴訟関係を明らかにし、終局判決の準備をすることができる。

 中間判決を下すことができる案件は以下の通りであり、第245条で列記されている。
 


@

独立した攻撃・防御方法
 独立した攻撃・防御方法とは訴訟中に生じた実体法上の争いに関する当事者の主張や抗弁であり、その他の主張や抗弁と切り離して裁判所が判決を下しうるものを言う。例えば、土地明渡請求訴訟において、被告が原告の所有権を争ったため(つまり、原告は所有権者ではないため、土地の明け渡しを求める資格を持たないと主張する)、原告が土地を購入したことや時効ないし相続によって取得したと述べる攻撃方法がこれに当たる。売買、時効または相続による所有権の取得は、それぞれ個別に判断することができ(そのため「独立した」攻撃方法であるという)、原告の土地明渡請求権の先決問題にあたる。

A

中間の争い
 中間の争いとは、本案(実体法上の問題)よりも先に決すべき訴訟法上の争いのうち、口頭弁論に基づき判断できるものである。例えば、訴訟要件 の具備や訴訟上の和解の効力に関する争いがそれにあたる。訴訟要件が充足されていたり、和解が無効であれば、裁判所はそのことを中間判決で確定し、本案については後に終局判決を下さなければならないが、訴訟要件に欠け、または和解が有効である場合には、終局判決によって訴えを却下ないし訴訟を終了させればよいので、中間判決は下す必要はない。

B

請求の原因および数額について争いがある場合における請求の原因

 例えば、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟や、不当利得の返還請求訴訟において、(a) 原告がそれらの請求権を有するかどうか(これを請求の原因と言う)だけではなく、(b) 請求額についても争いが生じる場合、裁判所は、まず、前者についてのみ判決を下すことができる。

 

 中間判決は、審理中に問題になった個々の争点を予め解決し、終局判決の準備をする目的を持つ。中間判決を下した裁判所はそれに拘束されるため、内容的に矛盾する終局判決を言い渡すことは許されない。なお、上級審は中間判決に拘束されない。

 中間判決に不服がある当事者は、終局判決が下されるのを待ち、上訴しうる(第283条参照)。



2.3. 全部判決と一部判決

 XがYに対し、@賃料の支払いと、A賃貸物の返還を訴求する場合、それぞれ別個に訴えを提起することも、また、両者をまとめて訴えることもできる(第136条)。まとめて提訴する場合であれ(請求の客観的併合)、裁判所は、2つの請求を切り離して終局判決を言い渡すことができる。このような判決を 一部判決 という(第243条第2項、第3項)。複数の請求の内、まだ判決が下されていないものの審理は継続されるが、この残部を対象とし、訴訟手続を完結するために下される判決を 残部判決 または 結末判決 と呼ぶ。

 なお、複数の請求を切り離して審理すれば、判断が矛盾するおそれがあるような場合は、一部判決を下してはならない。

 これに対し、裁判所が2つの請求について同時に言い渡す終局判決を
全部判決 と呼ぶ。

 裁判所が請求の一部について判断をし
なかった場合(判断し忘れた場合)(→ 裁判の脱漏)、判断されなかった部分は、裁判所に係属し続ける(第258条第1項)。裁判所は、申立てまたは職権で、脱漏部分について判決を下さなければならない(→ 追加判決)。